羽生善治九段がまた新たな金字塔を打ち立てた。
公式戦通算勝利、1434勝。
大山康晴十五世名人の持つ通算勝利記録を抜いて、単独1位となったのだ。達成局となった王位戦挑戦者決定リーグ白組プレーオフの対永瀬拓矢叡王戦のあとに行われた共同インタビューで、羽生は記録更新について以下のように語った。
「今年に入ってからは大きな目標でした。この前の対局は残念ながら負けてしまったので、今日、達成できて非常にうれしいです」
そして、6月6日の王位戦挑戦者決定戦に向けて、「2日後、すぐなんですけど、気力を充実させて次の対局に臨めたらいい」と意気込みを新たにした。
記録達成の対局については「似たような形を指したのですが、その手順を少し工夫してみました。結果として攻めが呼び込む形になってしまったので非常に怖く、ギリギリの局面で思い切って受けに回ったら、どうなるのかなと」と語った。
羽生の勝率がずば抜けて高い
将棋界は節目の記録として、公式戦通算600勝を将棋栄誉賞、800勝を将棋栄誉敢闘賞、1000勝を特別将棋栄誉賞として、それぞれ表彰している。感覚的には600勝がプロ野球の名球会入りで、1000勝が殿堂といったところだろうか。
これまで特別将棋栄誉賞を受賞したのは別表の通り9名だが、羽生の記録をみるとその勝率がずば抜けて高いことがわかる。勝率第2位の大山と比較して5分以上高いのはとんでもないことだ。同世代の佐藤康光九段と比較すると、対局数が350局以上多いのに、敗局は40局近く少ない。
羽生の勝利の内訳をみると、対佐藤の107勝(54敗)が最も多く、以下は谷川戦の105勝(62敗)、森内俊之九段戦の78勝(58敗)という数字が続く。佐藤は「私が最も多く貢献してしまいました」とジョークを飛ばしたこともあったが、対羽生戦を多く経験しているのは言わずもがなの一流棋士ばかりだ。
タイトル戦でストレート負けを喫すると「4連敗だけなら俺でもできる」という軽口がたたかれることがあるが、そもそもタイトル戦に出ること自体が大変であることは言うまでもない。それと同様に、まず羽生と公式戦を指すことが大変なのだ。羽生がタイトル保持者になっている棋戦で挑戦者となるか、あるいは羽生がシードされている段階まで予選を勝ち残らなければいけない。