第18回冬季オリンピック長野大会の開会式が、1998年のきょう2月7日午前11時より長野オリンピックスタジアム(長野市)で行なわれた。開会式では、善光寺の梵鐘を合図に、諏訪の御柱立ての行事、大相撲の幕内力士、横綱・曙の土俵入りが行なわれ、さらに選手団の入場、フィギュアスケートの伊藤みどりによる聖火点火のあと、最後は小澤征爾の指揮でベートーベンの第九が世界5大陸の各地の人々と衛星中継で結びながら合唱されたことが思い出される。

日本選手団の先導は大関・若乃花だった ©共同通信社

 式全体を通して日本の文化伝統が前面に押し出されたのは、この大会で総合プロデューサーを務めた浅利慶太(劇団四季代表)の意向だった。浅利によれば、近代オリンピックの父クーベルタンは、開会式は開催国の文化芸術の伝統のなかで行なうべきと考えていたにもかかわらず、回を追うごとに「どこのオリンピックでも西欧型のお祭りになっている。果してそれでいいのか」という疑問があったという(『文藝春秋』1998年3月号)。

 力士の起用も、日本古来のスポーツマンによって開会の露を払いたいとの思いから生まれた。力士たちは各国選手団の先導もすることになり、担当する国は抽選で決められた。ただしアメリカ選手団は大関・武蔵丸(のち横綱)が先導したのをはじめ、韓国は巌雄、アルゼンチンは星誕期、ブラジルは池森とそれぞれの国の出身力士が担当している。このとき幕内力士にはモンゴル出身の旭鷲山もいたが、モンゴルは開催前年の1997年末の時点でまだ選手がオリンピック参加の基準を満たしていなかったため、出場が決まれば先導するものとされた。はたして年をまたぎ1月にはモンゴルから選手1名のノルディック競技への参加が認められ、晴れて旭鷲山が先導することが決まる。