テイラー・ヤングマン(29)。昨年入団し、今年からジャイアンツの“背番号49”を背負うことになった外国人投手である。昨季はシーズン途中に左手を骨折してしまうも、3勝1敗で防御率2.79と苦しかった先発投手事情を支え、今年もここまで3勝とまずまずの成績。

 さて、このジャイアンツの背番号49。1984年以来、36年間で実に18人もの選手が着けてきたのですが、その内15人が外国人なんですよね。そんなジャイアンツ外国人助っ人の代名詞でもある49番。

 なんだか日本では不吉だとされているけど、銭湯の靴箱やロッカーの番号など、生活の中でこの番号を見ると僕はワクワクしてしまう。それはある選手のことを思い出してしまうからだ。

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 モスビー? ホリンズ? ゴンザレス? セドン?

 いいや、全員違う! 全員好きな外国人選手だけど、違う!

 マント?

 いいや、もっと違う!!

 49番を見て僕が思い出してしまうのは、ズバリ! ウォーレン・クロマティである。

49番を背負っていたウォーレン・クロマティ ©文藝春秋

“古き良き日本のプロ野球”を代表するパフォーマンス満載の選手

 背番号49の元祖・クロマティ。ジャイアンツ史上最強助っ人・クロマティ。僕の人生において永遠のスーパースター・クロマティ。

 彼が活躍した80年代後半、僕は小学生。当時の小学生は、誰しもあの腰を大きく曲げる独特なフォームを一度はマネしたものです。僕なんてあまりにも好きすぎて、筆箱や上履きをはじめ全ての持ち物に背番号の49を書きまくりました。出席番号は8だったのに。あげく、定規にまで油性ペンで49って書いたりしたもんだから、数字ばかりでもうわけわかんなくなったりして(笑)。

 応援歌の歌詞の「お前が打たなきゃ明日は雨、クロマティー♪」の部分は本当にそうで。彼が打たなかった翌日の学校は行くのが少し億劫で、外は晴れてても僕の心は確かに雨が降ったようにどんよりしてて、応援歌の歌詞通りだった。そっか! 「明日は雨」って実際の天気ではなくて、ファンの心を指してるのかな?! とか勝手に解釈したりして。

 それほど大好きだったクロマティは小学生の僕にとっては刺激が強すぎる“古き良き日本のプロ野球”を代表するパフォーマンス満載の選手だった。打席ではクチャクチャ風船ガムを噛んで膨らませたり、90年6月2日の対広島戦では、金石投手が投じた敬遠の球を引っ叩いてサヨナラ打。「これっていいの?」って父親に聞いたもんなー。ちなみに、この時、サヨナラのホームを踏んだのは、9回裏にも関わらず、代打を送られずにヒットで出塁した先発の桑田投手だったんですよね。これも今ではレアケース!! また、ある日、金石さんとご一緒した時に「おくまん君の好きな選手は誰なの?」と聞かれて、何気なく正直に「クロマティです!」と即答したのはよくよく考えると失敗だったなー(笑)。見事に変な空気になりましたもん。

 他にも、87年6月11日の対中日戦ではデッドボールに怒って、ボクサー顔負けの右ストレートを宮下投手にかましたりと、ある意味、枠にとらわれなさすぎるエピソードばかり(笑)。

 と思いきや、打点をあげたり、試合に勝利するとジャイアンツファンが陣取っているライトスタンド前まで行き、ファンと共にバンザイをするお茶目な一面もあって。クロマティのバンザイは、現代のプロ野球では当たり前になった“ファンサービスのはしり”だったのかもしれないなー。