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校則がないからこそ、教師と生徒は対等に話し合うことができる――西郷孝彦校長インタビュー

世田谷区立桜丘中学校には、チャイムも制服もない

2019/06/07

genre : ライフ, 教育, 社会

うちの学校で学力が落ちたら……

――定期テストをなくして、評価はどうやっているのですか?

西郷 9教科100点満点のテスト勉強は、なかなか一度にできません。でも、「10点満点」のテストならば、前の日に家で勉強すればできます。中間や期末テストをまとめてやるのではなく、こまめに小テストをやっていくことにしたのです。生徒の提案に対して、先生たちは反対すると思っていました。ところが、先生方が、定期テストではない方法を調べてきました。僕以上のことを先生方は考えていたんです。

 うちの学校で学力が落ちたら、日本にとってのチャレンジは終わります。校則をなくしたら学力は落ちる、という結論になってしまう。だから先生方も、学力向上には力を入れようと思っています。

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 実際、学力はかなり上がっていますが、成績のいい子は、偏差値の高い進学校よりも、自由な校風の青山高校だったり、やりたい部活動で高校を選んだりすることが多いですね。だから、親御さんはどう思っているのか……(笑)。ただ、そうやって自分で考えることが重要ですし、そういう自由な環境からじゃなければ、日本のスティーブ・ジョブズは生まれてこないと思いますよ。

 

今後、改善したいのは授業の質です

――部活動のあり方はどうでしょうか?

西郷 水曜日と日曜日の公式練習は禁止しています。そして、週10時間と決めて、平日は2時間、土曜日は3時間にしています。それ以外に自主練はありますが、強制は禁止しています。そうすることで自主的な意識が芽生えます。自主練に教師は立ち合いませんが、コーチか保護者が付いているようにします。

 部活の顧問をやりたくて教師になった人もいます。そんな人は、土日も部活をやりたい。しかし、そうでない人からは「ブラック部活」と呼ばれるほどです。いまは教師のなり手がいない時代ですからね。少しでも働きやすい職場にしなければいけません。また、教師にも休養が必要です。飲みに行ったり、趣味に時間を費やすことが一人の人間として必要なのです。

 

――今後の学校運営の課題は?

西郷 改善したいのは授業の質です。一斉に知識を注入する授業は、もういいでしょ? 人間は知識ではAIにかないません。創造性を教えていかないと、学校だけでなく、日本が潰れてしまいます。だから、受験用の授業と、創造性を育てる授業を分けたいです。ただ、国が変わらないとなかなかできません。そのため、受験用の授業も必要悪でやっていますが、チャレンジをしていきたいです。

 この学校の校長も今年で10年になりましたが、長期間務めたからこそ、できたという部分もあります。でも、それも今年度で終わりです。その後は、何も考えていません。

 

 写真=深野未季/文藝春秋

2019年6月7日12:50追記:一部表現を修正しました。

校則がないからこそ、教師と生徒は対等に話し合うことができる――西郷孝彦校長インタビュー

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