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電子書店に集まる読者のデータをどう活用するか

柳井 次の質問ですが、読者の読書傾向については、どのくらいデータを取っているのでしょうか? 例えば、「この人はこの本を何ページくらいまで読んでやめた」とか。

加藤 そういうデータを取れるか取れないかといったら、取れます。ある人がどれだけの本を買っているか、どれだけの本を読んでいるか、どれだけの本を積んでいるか、一日の読書時間はどれくらいか、どの時間帯に読んでいるか、何ページまで読んだか、読み終わったか、読み終わってから続巻を買うまでにどれぐらいの時間がかかったかなどなど、取れないデータはほとんどありません。

 いまは仕込んでいないですが、位置情報を絡めた情報も取れます。

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柳井 通勤時間には何を読んでいるかとか、自宅では何を読んでいるかといった、細かなデータも取れということですね。

加藤 ネットワーク配下にある場合、取れないデータはほとんどありません。でも逆にデモグラ(デモグラフィック:性別、年齢、住んでいる地域、所得、職業、学歴、家族構成など)は極力取らないようにしているので、その人が男性なのか女性なのか、何歳なのかといった直接的な情報はなくて、逆に行動データからデモグラを想像するという感じです。

柳井 情報を活用するということだと、私は自分が書いた小説を大学の先輩に目の前で読んでもらって、時計をにらみながら読書動向をメモしました。そうすると、途中でページを戻ったところや、少し考え込んだところなどが全部見えてきて、そういうところの文章は直さないといけないと分かるんですね。

 電子書店さんからデータを貰うのは無理でしょうが、書き手としてはそういうデータを見たいものです。データで明らかになった読む上でのストレスを減らしていくことで、より売れる本が書けるのではないかと思いますので。

 

加藤 いまのテレビ業界の視聴率調査がそうですね。ここで視聴者が離脱しているとか、ここで増えてるとか。コミックスの無料試し読みなど、離脱率が露骨にわかります。有料になって買わなければ離脱してるわけですから(笑)。たぶん作家さんが思っている以上に離脱率は高いと思います。

松原 離脱ということだと、刊行のリズムが崩れたシリーズ作品は一気に読まれなくなる傾向があります。刊行時期が遅れたりすると、そのタイミングで離脱されてしまう。

司会 やっぱりシリーズはコンスタントに出し続けることが大事なんですね。

今度は電子書店員の皆さんから柳井さんにご質問をいただければと思います。

#2に続く)
 写真=深野未季/文藝春秋

※この座談会のノーカット版が文春booksに掲載されています。

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