司会 矢部さんは以前、リアル書店で書店員をされていて、それから電子書店へ移られたわけですが、両者を比較していただくとどうでしょうか?
矢部(honto) 私はかなり長い間リアル書店に勤めてから、2年まえに電子書店に移りました。電子書店員1年生として率直な感想を申しますと、電子書籍って思っていた以上に便利だなという実感があります。買う手間もかからず、夜中に目が覚めて読むような時は部屋を明るくしなくても読めますし、大変便利なツールだなと思います。
世間の動きに敏感な電子書籍
柳井 紙の本とくらべて売れ行きの傾向が違うというようなことはありますか?
矢部 紙の書店も世の中の動きに対して素早く反応しようと頑張っていますが、さすがに夜中のテレビがきっかけで翌日すぐに売れ行きが跳ね上がるというのは仕入れの関係などもあって難しいです。でも、電子の場合は夜中でもすぐに購入できますので、1時間どころか分単位でパッとランキングが上がるというような反応の速さは初体験でした。
松原 うちでは、「いま売れてます」というサービスがありまして、先ほどの三つのチェーン店やhontoの電子書籍や通販サイトで売れた本がリアルタイムに流れてきます。例えば「アメトーーク!」の読書芸人がオンエアされた後の数時間は電子書籍でピークが出来ます。翌日にピークを迎えるのは通販、その後でリアル書店で盛り上がります。リアル書店の方が盛り上がり方も、下り方も穏やかです。
柳井 電子書籍の方が、より世の中の動きに敏感に連動して動くということですね。佐藤さんは電子書籍の売れ行きに関して嗅覚が働くということはありますか?
佐藤(Reader Store) もう何度も話が出ていますが、紙の書店さんと違うのはフェアの反応が出やすいことではないでしょうか。新刊や映画化された話題作も売れるのですが、フェアになった時の売れ行きが今後の動きを読む参考になります。紙の書店さんだと価格が変わらないのでその時に買うしかないわけですが、電子はお客さんがフェアを待っているのを感じます。
柳井 いま伺っていると、フェアが思った以上に重要という印象です。作家さんの中にはディスカウントされるのを嫌がる方もいると聞いたのですが、電子に関してはあまり得策ではないようですね。
佐藤 ひとつのきっかけになることは確かです。読者のみなさんも読んでみたい本はたくさんあるでしょうから、その中からどれを選ぼうかという時に、フェアで価格が下がったことが少し背中を押してくれるんですね。