トランプ・コーラ問題
トランプ・ホテルから、世界のトップブランドが並ぶ5番街に移動した。トランプ・タワーを訪問するためだ。高級マンションとオフィススぺース、レストラン、ショップの複合施設で、その最上階にトランプが職・住を構える。安倍総理が当選直後のトランプと面談した場所として、日本でも一躍有名なった金ピカの内装だ。
トランプ・カフェという店があったので入ってみた。ここで働くサビールさん(仮名)はトランプ・カフェ歴3年半。この日曜日(1月15日)もトランプがやって来たという。選挙運動前は毎週、何度も昼ごはんを食べにきていたらしい。
カフェの人気メニューは『トランプママのミートローフ』。だけどトランプは注文したことがない」と言って笑う。「彼は素晴らしい。なぜなら、面の皮がとてもあついから」といって私にハイタッチを求めてきた。ボスのおべんちゃらをいわない、楽しいヤツだ。
「彼はいつもチキンをたべる。クラシック・コーラを飲みながら。ダイエット・コーラを飲むような妥協を彼はしない」。
これはトランプの性格を表すうえで、もしかしたら意味深な分析かもしれない。
念のため、レジスタッフにトランプがいつも注文する飲み物をきいてみたら、「いつもダイエット・コークよ」と自信に満ちた答えがかえってきた。
トランプはクラシックとダイエット、一体どっちのコークが好きなのか。でも、さすがはトランプ。毎日のように接するスタッフに好きな飲み物さえ、悟らせない予測不能な人物である。自著で「私はいつも予測不能でありたいのだ」と書いているとおりだ。
「トランプファミリーはみんな庶民的なの」
ランチは「トランプ・グリル」でとることにした。「イヴァンカ・サラダ」というメニューがあったが、「もう終了したよ」とのこと。仕方がないのでトランプ・バーガーとトランプ・ワインを注文した。トランプはミネラルウオーターやチョコレートのブランドばかりか、ワイナリーまで所有しているのだ。裏ラベルをみると、「トランプ・ワイナリーの目標は世界のあらゆる場所で最高のワインを作ること」といつもの最上を目指す姿勢が明記してある。
味はなかなかだ。芳醇なブラックチェリーの香りが特徴で、品種はメルロー52%、カベルネ28%……。ワインを片手にウエイトレスとトランプの話で盛り上がる。
トランプタワーで15年働いている東欧系アメリカ人の美女だ。
「トランプの好きなところは偉ぶらないところ。子供のイヴァンカやエリックも同じで親しみやすい。普通、お金持ちになると自分のことを勘違いするが、そんなことは絶対にない。いつも庶民的なの」という。
「食べ物は選り好みしないけど、よく頼むのはトランプ・ステーキ。乾杯はダイエット・コーラでする。絶対、お酒を飲まないし、タバコも吸わない。子供たちも同じで、みんな健康的」なんだそうな。トランプ・ファミリーで来店することもあるという。
「じつはイヴァンカがパパにカレ(クシュナー。イヴァンカの夫でトランプ政権の上級顧問)をはじめて紹介したのは、ここだったの。それ以来、家族ぐるみでよく来るようになっている」のだそうだ。
ボスはトランプタワーを去り、ホワイトハウスへ移った。主なき城でも、トランプをボスと慕うスタッフたちが今日も働いている。
写真=浅川芳裕