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女優・吉高由里子を変えた"2年の休養期間"

 だって、吉高さんのイメージって、どちらかというと「はっちゃけ」「自由」「非定型」じゃないですか。いまだに「ハイボールでウェーイ!」なCMの印象も強いし。いつ頃から彼女は、バランサーだったり、他人をフォローする先輩キャラを演じるようになったのでしょう。

 と、イロイロ考えるうちに、ある答えに辿り着きました。

 吉高由里子のひとつの“転換”。それはあの朝ドラと、その後の約2年に渡る“休養”にあるのではないか、と。

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 2014年上半期のNHK朝ドラ『花子とアン』。「赤毛のアン」の翻訳者をモデルにした本作で、ヒロインの村岡花子を演じ、その年の紅白歌合戦では紅組司会も担当。

 続く2015年、2016年の約2年、彼女は映像の仕事をほぼ休み、気鋭の劇作家&演出家である赤堀雅秋が手掛けた『大逆走』と、客席数250に満たない小劇場・シアタートラムで上演された高橋一生、キムラ緑子との3人芝居『レディエント・バーミン』という、エッジの効いた2本の舞台に出演します。

舞台「大逆走」のプレスコールで演技の一部を披露する北村一輝と吉高由里子 ©時事通信社

 この約2年の映像作品“休養”期間を経て、2017年には映画『ユリゴコロ』で殺人者、ドラマ『東京タラレバ娘』で脚本家を演じ、2018年にはドラマ『正義のセ』で主演、映画『検察側の罪人』にはヒロイン・橘沙穂役で出演。

 ここで気づくのが、朝ドラ前と休養後との仕事ペースの違い。2017年以降は年に映画とドラマ1本ずつと、2014年までと比べ、その出演本数が激減しているのです。

『わた定』主人公と繋がる、吉高由里子の働き方改革

 そこで思い出して欲しいのが『わた定』結衣の仕事との向き合い方。結衣は前職で激務の末に転倒し、意識不明の重体に陥った過去から「ネットヒーローズ」では「死んで花実が咲くものか」と、定時退社をポリシーに掲げて仕事をしている人物。

 なんか深くリンクしている気がするんです……今の吉高由里子と、『わた定』東山結衣のキャラクターが。

 デビュー以来、特に2008年の『蛇にピアス』以降はつねに次に演じる台本が積まれ、“主演女優は一時病む”とまでいわれる朝ドラの過酷な撮影を経てからの2年。この間に2本の舞台に立った経験と、ドラマや映画の現場からしばし離脱したことで、彼女の中になにか大きな変化が生じ、それが『わた定』結衣の醸し出す柔らかく自然な空気へと繋がったのではないか。

 吉高由里子が今、この役を演じることに、なにか大きな「意味」を感じるのは私だけでしょうか。

休養前の、2014年の「第25回日本ジュエリー ベスト ドレッサー賞」の20代部門を受賞した吉高由里子 ©文藝春秋