昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/06/15

genre : ライフ,

部族その3 ヒマカベ族と人食いの洞窟

 チンブー地域から車でコレコレト村へ移動し、3つ目の部族ヒマカベ族に会いに行く。ジャングルの中を歩いていくと、突如目の前に現れるTシャツジーンズ姿のお兄さん。我々に気づくと「しまった!」とばかりに走って消えた。お兄さんが消えた先にガイドが案内すると、小さなコレコレト村に到着。

 しばらく待っていると、全身白塗りでおなかに腹芸のようなペインティングを施し、草木でできたふんどしをつけたヒマカベ族が隊列を組んで登場した。よく見るとさっき出会ったTシャツジーンズのお兄さんも混ざっている。どうやらお兄さんは、原始的な伝統生活を捨てて洋服で生活し、観光客が来る時だけ部族の格好をしているのを隠そうとして慌てて逃げたようだ。硬そうな草木のまわしよりは柔らかい洋服のほうがいいに決まっているから、現代化も仕方ない。

ヒマカベ族のおなかに描かれた変な顔にニヤニヤしてしまう。

 軍隊のように規律正しく動きながら近づくヒマカベ族から、聞こえるか聞こえないかくらいの低く小さい声が。耳を澄まして聞いてみると…

 モコッ! モコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコモコ

 腹芸ペインティングだけでも十分面白いのに、モコモコ言ってて笑ってしまうではないか。隊長が「モコッ!」と言うと、それを合図に全員が指示された方角へ向き直し、モコモコ言いながら次の指示があるまで小走りで移動する。この独特の民族舞踊はモコモコダンスという名前らしい。おなかに描かれた絵が幽霊のようなので、別名ゴーストダンスとも呼ばれるそうだ。

モコッ?と首をかしげて可愛らしいヒマカベ族。

 モコモコダンスのお次は、ヒマカベ族の案内でグルポカ山トレッキング。1時間登った先にある山頂近くには、部族が人の死体を切り裂いて食べる儀式を行っていたという恐ろしい洞窟がある。洞窟の入り口がかなり小さく、同行者はお尻がつっかえそうだからと中に入るのを諦め、ガイドと2人で別ルートから山頂を目指すことになった。つまり、暗く狭い洞窟にいるのはヒマカベ族と私だけである。そんな状況でヒマカベ族が恐ろしい一言を言い放った。

洞窟で人食いの話をするヒマカベ族。

 ヒマカベ族「日本人の人肉が一番美味しいんだよね」

 逃げ場がない洞窟で、このオッサンいきなり何てことを言い出すんだ。確かに自分のお肉は脂身いっぱいで美味しいかもしれない。いや、そういうことじゃない。

 私「た! 食べないでくださいいい!」
 ヒマカベ族「食べないよ~、あはは」

 まさかパプアニューギニアのジャングルちほーでけものフレンズごっこをすることになるとは。しかし人間を食していたのはとうの昔の話である。今やTシャツジーンズで現代的な生活をしているんだから、そりゃそうだ。

z