日系のエアラインに搭乗する時、おなじみの光景がある。

 グランドスタッフの搭乗のコールが近づくと、ゲート前には長蛇の列ができる。とりわけ目だつのがビジネスクラスやマイレージの上級会員の優先搭乗の列だ。50人以上ということも珍しくない。そのほとんどが日本人、多くが男性、さらにいえば中高年が多くを占める。彼らはそれがあたかも吾に与えられし特権かという雰囲気を醸し出しつつ、無表情に搭乗していく。しかし、そもそも早く搭乗することにどういう意味があるのだろうか。

 まず、大きな荷物を預けたいから早めにスペースを確保したい。それは分かる。せっかくのビジネスクラスだから少しでも早く搭乗して機内でくつろぎたい。これも理解できる。

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 しかし、荷物もさほど大きくなく、エコノミークラスの場合はどうだろう?

 私は可能なかぎり最終の搭乗者近くで乗ることにしている(飛行機を遅らせるのはもちろん言語同断だから、最後の最後の客にはならない)。それは単純な理由による。最後に乗れば、機内の座席の埋まり具合が手にとるようにわかるからだ。

横になって長時間移動できる場合も

 航空会社は客が事前にアサインした席からの移動を原則禁じている。これは飛行機の離着陸のときにウェイトアンドバランスが崩れることを避けるためのものだ。たとえば力士の集団がみな最後尾にまとめて座ればバランスが危うくなるだろう(逆に左や右にかたまってもそれほど影響はないそうだ)。

 しかし、すべての座席の移動を厳しくとりしまっているわけではない。実際に離着陸時をのぞけば、席の移動を認めたり、黙認したりするケースは少なからずある。

 自分の指定した席とちがう席に移動した後、その座席番号の搭乗券を持った乗客が現れたためにすごすごと退散する人を見かける。しかし、自分が最後に搭乗した場合、かりに自分の指定された座席番号以外の席に座ったとしても、ほかの人がそこに来る可能性はほとんどない。少なくとも恥ずかしい思いはしなくてすむわけだ。

LCCのタイガーエア台湾の非常口前の座席。片道2700円ほどを払えば3席独占して横になれることもある

 先ほどふれたウェイトアンドバランスなどの関係から、かりに80%の搭乗率だったとしても、航空会社は空席を分散させることが多い。エコノミークラスの前方をほぼ満席にしているにもかかわらず、後方には空席が目立つことがしばしばあるのはそのためだ。だからエコノミークラスに搭乗する際は必ず最後尾までどのような状況になっているか確認したほうがよいだろう。