「え!? こんなことで?」

 これまで5000体以上の遺体を解剖してきたという法医学者の高木徹也さん。近年「まさか」と驚くような原因で亡くなる高齢者の遺体に出会う回数が増えてきているという。

 ここでは、高木さんの著書『こんなことで、死にたくなかった: 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」』(三笠書房)より一部を抜粋。サウナ人気が高まり、一般的になった「ととのう」という言葉。しかし、そこには“死の危険”が潜んでいるかもしれない――。(全6回の6回目/最初から読む)

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法医学者・高木徹也さん

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サウナで死ぬ

 今や世間は空前のサウナブームと言っても過言ではないでしょう。

 サウナはフィンランドが発祥とされています。

 日本では、1792年、北海道根室の海岸で、寒さをしのぐためにフィンランド式サウナを作ったのが始まりだそうです。

 サウナ浴は、80度以上のサウナ室に入り、身体が温まったら外に出て冷水風呂に浸かることを繰り返す「温冷交代浴」が一般的。

 温熱効果による血管の拡張と血流の活性化、心肺機能の向上、発汗による美肌効果、代謝を高めることによるダイエット効果、ストレス解消による精神的リラックス効果、温冷交代浴による自律神経の活性化など、効能はたくさんあります。

 しかし逆に、サウナ浴中や浴後に死亡するケースもあるのです。

※写真はイメージ ©maroke/イメージマート

 極度の寒暖差を、日常では経験できないほどの短時間で感じるのですから、人体に負荷がかかるのは当然でしょう。特に動脈硬化症や糖尿病などの生活習慣病がある高齢者は、血管系の病気を引き起こす可能性が高くなります。

 高温の室内に入れば、強制的に血管が拡張され血圧が低下します。さらに、発汗が促され脱水状態になります。

 その結果、血圧の低下により脳血流が低下し、脱水によって血液もドロドロになることから、「脳梗塞」の危険が高まるのです。