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始発の野洲駅で数人が並んでいた

 Aシート車両を連結した新快速は1日2往復だ。実験的な試みかもしれない。時刻はWebサイトで公開されている。土曜日の昼前、発車20分前に野洲駅に行ってみると、プラットホームのAシート車両の扉位置には数人の列ができていた。野洲駅にはAシートや連結列車を告知するようなポスターやパンフレットの類いがない。自分で時刻を調べ、Aシートに乗りに来た人が並ぶ。お気に入り列車かもしれない。

 野洲駅は新快速の運行区間としては東の端のほう。電車は京都~神戸間の混雑を見越した12両編成だけど、空席が多い。普通車の2座席クロスシートも選び放題だ。それにもかかわらず、500円の有料座席を選ぶ人が10人以上とは意外だ。料金は車内精算方式で、空いている席に座っていると車掌さんが精算にやってくる。

Aシート連結の新快速、野洲~姫路間の路線略図(地理院地図を筆者加工)

 これもなかなか良いアイデアだ。指定席にして窓口や券売機で売るとなれば、システムの変更や各駅係員への周知など手間がかかりすぎる。すべての新快速にAシートが連結されるまでは、車掌の対応で十分だろう。「けっこう乗っていますね」と車掌さんに話してみたら「お陰様でお客様に浸透しておりまして」と返ってきた。

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ノートPCやスマホを心置きなく使える

 Aシートのサービスは、リクライニングシート、テーブル付き、全席にコンセント、無料Wi-Fi、大型荷物置き場だ。

JR西日本の新快速223系車両の有料座席「Aシート」 ©共同通信社

 ダイヤを見ると、平日朝の網干発が通勤時間帯になっているほかは日中の運行だ。どちらかと言えば長距離客、観光客、インバウンド向けかもしれない。普通車よりは飲食しやすく、Wi-FiとコンセントがあればノートPCやスマホを心置きなく使える。ここに500円の価値はあると思う。

 他の乗客も飲み物やオヤツを持参してくつろいだ様子だった。私もコンビニで買った弁当を食べた。あらためて、最近は駅弁を売る駅が少なくて残念だと思う。欲を言えばAシートに車内販売かホットコーヒーの自販機がほしい。

JR三ノ宮駅 ©iStock.com
Aシート車両連結の新快速が発着するJR姫路駅 ©iStock.com

 予想通り、京都あたりから乗客が増えて、大阪付近で乗客が入れ替わる。三ノ宮あたりまでは座席の半分ほどが埋まっていた。それから乗客は減っていき、姫路で私のほか数人が降りた。Aシートの需要はあると思った。乗車率は低くても途中駅で入れ替わるから、ひとつの座席で複数回の売上がある。指定席の通勤ライナーより収入機会は多そうだ。

 JRの在来線は特急や急行が減り、落ち着いて乗れる列車が少ないと思う。その意味で、新快速に急行列車の役割を与えるAシートは良い。連結列車をもっと増やしてほしい。