「ちょっとじゃんけんしてみませんか。あなたは“後出し”してください。そして、必ず僕に負けてください」

 記者にこう語りかけるのは、5月、川崎市・登戸で起きた連続殺傷事件を受けて、自身の体験をツイッターに投稿し、注目を集めているカウンセラーの中村カズノリ氏(39)だ。氏はかつて精神的に追い詰められて通り魔殺人を計画したものの、踏みとどまり、カウンセリングによって立ち直ったという経験を持つ。

「相手と対等になる」ことを学ぶ”後出し負けじゃんけん” ©iStock.com

心に潜む問題を見つめる

 現在、中村氏のもとには自身の暴力衝動に悩む人や、家族がひきこもりになってしまったという人たちからの問い合わせが殺到しているという。

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「今の日本には、あの事件が他人事ではないと感じる人が、かなりの数いるんです。私たちのもとに連絡してきてくださる方は一握りで、誰にも言えず悩みを深めている人は大変な数になると思います」

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 そんな人に試してもらいたいというのが、実際にカウンセリングで取り入れている「ワーク」だ。

「もちろんこれをしたから暴力衝動が治まるという特効薬ではありません。ですが、心に潜む問題を見つめるきっかけになります」

 そのひとつが「後出し“負け”じゃんけん」。相手を決めてじゃんけんをし、自分は後出しをして、わざと負けるという遊びを繰り返すのだ。これは中村氏がまさにつらい思いをしていた時に、カウンセラーから教えられたメソッドなのだという。