昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

source : 週刊文春デジタル

genre : ライフ, 社会, ライフスタイル

無意識の抑圧から解放される「後出し“負け”じゃんけん」

「後出しじゃんけんなので、相手が出したものを見てから、自分が手を出すわけです。が、勝ってはいけない。私も4年前、カウンセリングでこれを勧められたのですが、これが意外と難しいのです。

 精神的な作用としては、進んで負けることで、『勝たなければいけない』という無意識の抑圧から解放されていくのです。凝り固まった心をほぐす。特にDV加害者はこのワークが苦手なんです。

 たかがじゃんけんですが、不思議とコミュニケーションの仕方にも影響が出てきます。高圧的で、他者へのイライラを隠せなかった人が、この”後出し負け”を繰り返しているうちに、相手と対等に会話できるようになってくる。自分の意見が否定されるとすぐにカッとなってキレてしまうという人には、ぜひ試してもらいたいですね」

趣味の自転車で訪れた西表島の港で。「多趣味だったおかげで心が軽くなりました」

 次に、中村さんがおすすめするのが、「妄想自己紹介」ワークだ。実際のカウンセリングでは複数人が参加するグループワークで行われている。

グループワークの様子。老若男女問わず交流することで新たな価値観を学ぶ

「参加者は二人で向かい合って、相手に自己紹介するわけですが、架空の自分を自己紹介し合うというワークです。それを相手を変えて何回か行う。『妄想自己紹介』では、自分の好きな設定になりきるんです。『職業はミュージシャン』とか『大富豪で自宅には日本庭園がある』とか、『韓流アイドルと交際している』というものでもいい。どんな性格でどんな生活をしているか、具体的に妄想して、口に出してみてください」

妄想が自由であればあるほど行動の選択肢の多さに気づく ©iStock.com

 妄想自己紹介は自分の可能性を否定しない練習だ。

「現実の自分は色々なしがらみに縛られているけれど、妄想の中では自由に自分を作ることができる。架空の自分の体験や思いを語るうちに、今までしまい込んでいた自分が出てくるのです。今まで知らなかった自分を理解し、思考の多様性や行動の選択肢の多さなどにも気づく。

 暴力衝動や、その果てにある拡大自殺願望は、『今の状況が改善されることはない』という絶望から生まれます。『その絶望は思い込みかもしれない』と気づくことがこのワークの狙いです」