「僕は通り魔を計画したことがあるんです。『誰にも見向きされずに朽ち果てていくのは嫌だ。最期に一花咲かせたい』。当時はそういう衝動に駆られていました」
こう明かすのは、「DVはなおる 続 被害・加害当事者が語る『傷つけない支援』」(ジャパンマシニスト社)に自身の体験談を寄稿するなど、カウンセラーとして活動する中村カズノリ氏(39)だ。
「ひきこもり」は“正体不明のモンスター”か
5月に起きた2つの衝撃的な事件。最初の事件は5月28日の川崎市登戸の閑静な住宅街で起きた。岩崎隆一容疑者(51)は、登校中の小学生含む20人を殺傷し、自らも命を絶った。他人を巻き添えにする「拡大自殺」の可能性も指摘されている。
そのわずか4日後、元農水事務次官の熊澤英昭容疑者(76)は、息子・英一郎さん(44)の殺害に至った。容疑者は動機について「川崎の殺傷事件を知り、長男が人に危害を加えるかもしれないとも思った」といった供述をしているという。
共通するのは当事者が、中高年の「ひきこもり」だったことだ。今年3月、内閣府は日本における「中高年のひきこもり」が61万人を超えると発表。この2つの事件をきっかけに「中高年のひきこもり」は大きな注目を集めている。ひきこもりはいつキレるかわからない”正体不明のモンスター”だと受け止める人もいるのではないだろうか。
3年前、通り魔を計画した理由
中村氏にも“正体不明のモンスター”だった時期があるという。それが冒頭のコメントにある、通り魔を計画したときである。今から約3年前のことだ。
「会社勤めをしていたとき、あまりの激務にストレスで睡眠障害になってしまったことがあるんです。朝起きられないため連絡もできず、月に2、3回は無断欠勤するような状態が続いたので退職することにしました。僕が退職届を提出した人事の担当者が、最後に僕に放った言葉は『思いつめて自殺とかしないでね』でした。その言葉で、なぜかカーッとなって、頭が真っ白になってしまったんです」
何気ない一言が、当時の中村氏を追い込んだ。