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オンラインゲームで”ネカマ”になってみる

 しかし、悩んでいる人の中には、ワークを一緒にできる相手がいない人も多いだろう。その場合には「オンラインゲーム」で最初の一歩を踏み出すのもいいという。

「僕はオンラインゲームをプレイするのが好きですが、これはカウンセリングにも使えるなと思っているんです。『ゲームがひきこもりを誘発したのではないか』という論調もあります。しかし、個人的な見解ですが、それは間違っている。オンラインゲームは遊び方次第で、現実社会での状況を好転させることもできるのです」

趣味のキャニオニング。アウトドアだけでなく、ゲームや読書も好きだという中村氏

 たとえば、オンラインゲームで”ネカマ”になってみるのも手だという。

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「ネカマ、つまりネットの匿名性を使って男性が女性のように振る舞うわけです。女性が男性のように振る舞ってもいい。現実の自分とまったく違う人格になることで、逃げ場ができるんです。複数のキャラクターを使い分けてプレイするのもいい。『このキャラで他のプレイヤーとモメたから次はこっち』というように使い分けていくんです。

 無責任だと感じる方もいるかもしれませんが、現実社会でも、案外みんなそうやって生きている。悩みを抱えている人は真面目すぎる人が多いんです。もっと適当に生きていいと実感できます」

中村氏も「よく女性のキャラクターでゲームをします」 ©iStock.com

自己嫌悪、嫉妬妄想などの“病的な思考回路”から脱却する

 中村氏自身、男は強くあらねばならない、泣き言を言ってはいけない、という自己概念に縛られていた。ワークという装置を使って、わざと妄想を言ったり、非合理なことを行うことで、普段は吐露しない自分の感情や価値観を表出し、自分の可能性を理解する。

自転車仲間と初日の出を見に行った2017年元旦。房総半島・犬吠埼灯台をバックに(写真左)
2016年、琵琶湖一周の自転車イベントで。この年にカウンセラーとして活動を開始(写真左)

「自己嫌悪、嫉妬妄想、被害妄想などの“病的な思考回路”から脱却するには、他者とポジティブな回路を構築し、互いに気持ちの良いコミュニケーションを楽しめるような仲間を持つこと。それが回復や癒やしにつながるのです。これらのワークを知ってもらうことで、日本が“一億総カウンセラー”状態になれば、私のようにどん底から救われる人もいるのではないかと思うのです」

 中村氏は現在もさまざまなワークを考案し続けているという。

DVはなおる 続 被害・加害当事者が語る「傷つけない支援」

味沢 道明

ジャパンマシニスト社

2018年9月18日 発売