「どうして力を合わせようとしないのだろう」
また、市当局が再三にわたって主催者に話し合いを申し入れたにもかかわらず、あくまで自然発生的なデモ行進であるからとの理由で話し合いを拒否したこと。週末の16日には別のジャーナリスト団体が企画した集会に対し許可は下りていて、市当局は合流を促したのだが、あちらはゴルノフ記者の解放にのっかっただけの「フェイク集会」だとして、デモ行進の主催者は16日の許可集会には参加しないようにSNSで呼びかけた。
その結果、当初2万人の参加が見込まれていた16日の集会は、ふたを開けてみれば1600人足らずという非常に閑散としたものになった。2時間の予定であったのが30分切り上げての終了。帰り道、参加者のひとりは「どうして力を合わせようとしないのだろう。目的は同じだというのに」と嘆いていた。
許可された集会では、警備隊とフェンスで囲まれた、通りを封鎖して作った場所があてがわれる。入り口では入念なセキュリティチェックがある。2時間という制約もあり、時間になれば解散しなければならない。そうした何もかも政府に管理された集会に価値などないという者もいる。警備隊に手荒く連行される映像が世界に発信されれば政権にダメージを与えることができると、無許可集会を好んで煽り立てる者もいる。
“おひとりさまデモ”に成果はあったのか
今回拘束された中で多かったのは学生など20代を中心とした若者たちだ。彼らに科された罰金は15万ルーブル(約25万円)。ロシアの平均的な給料の数か月分にあたる。学生にはまず払えない金額だ。自由の代価としてはあまりにも高い。
SNSを通して拡散する情報に触発され、言論の自由を求めて集まった善意の若者たち。“おひとりさま”の新たな抗議デモの形が今後どれだけ力を発揮できるかは、彼ら次第だ。そのためにも、本当の自由とは何なのか、Я(私)とは誰でМы(私たち)とは誰なのか、ひとりひとりが問題に向き合って、考えて、その上で行動を起こさなければならない。
写真=栗田智