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薬物検査の結果は完全にシロだった

 一方で、じつは逮捕時から警察側の旗色はかなり悪いものだった。薬物検査の結果は完全にシロで、薬物の入った袋からも記者の指紋は検出されず、警察が証拠として提出した家宅捜索時の写真も9枚中8枚が無関係のものであることがわかるなど、捜査の杜撰さが目立った。誰がここまで雑なシナリオを書いたのかはわからないが、これで押し切れると思ったのだろうか。あるいは、ロシアのお家芸である毒殺、爆殺、銃殺といった暗殺方法に飽きて、趣向を凝らしてみたのだろうか。

6月16日の集会の様子。「権力は麻薬だ」との旗で権力に依存する政府を揶揄

 この問題に関してウラジーミル・プーチン大統領は一切コメントせず、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官が「これはクレムリンではなく捜査当局が判断すべき問題。人間である以上、間違いが起きる可能性はある」と解放前に述べ、責任回避の手を打った。外務省のマリア・ザハロワ報道官は解放発表後、すぐさま「最高の日。涙が出るほど。幸せ」と自身のフェイスブックに書き綴った。こうしたポジション取りの巧さや速さは参考にしたいものだ。

 ゴルノフ記者は解放後、ひとまずは安堵の表情を浮かべながら、「みなさんの支援に感謝しています。その恩返しのためにも、このような事件が二度と起こらないようにしたい」と話し、今後も取材の手を緩めることはないと意欲を見せた。警察幹部の更迭といったトカゲの尻尾切りのような幕引きで納得できるべくもない。今回の逮捕はなぜ起きたのか、誰が何のために命じたのか、汚職との関連性についても明らかにしていくという──。

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Lika Kremerさん(@kremerlik)がシェアした投稿 -

 ……と、ここで原稿を終えることができればよかったのだが、残念ながら実際はそうならなかった。

デモ行進が強行され、500人以上が拘束

 記者の解放で中止になるかと思われた翌12日のデモ行進がそのまま強行され、当局に500人以上が拘束される事態になったのだ。

12日のデモ集会の様子。真ん中の女性は「ポケットの中身は何?」と書かれたプラカードを掲げる

 基本的にロシアのデモはごく平和的なものだ。フランスのように店を破壊したり、車を燃やしたり、投石したりといった過激な暴動に発展することはめったにない。そこの部分は非常に好感が持てるのだが、今回の無許可集会には少しばかり残念な部分もあった。

 ひとつは、祝日の午後に人出の多い混雑した場所で行なわれたこと。先の「おひとりさまデモ」があった警察本部前は普段から人通りがまばらなこともあって大きな問題にはならなかったのだが、12日のデモ行進はすぐ近くの並木通りでイベントが開催されていたこともあり、家族連れの姿もある中での集会だった。そうした普通の一般市民なのかデモ参加者なのかの見極めが難しい中で警備隊による拘束が行なわれたため、間違えられて拘束された者や、その場の流れでデモに加わり拘束された者もいた。