ホテル旅館業界の意向を汲んで作られた民泊新法
だが、民泊新法で定められたのはたぶんにホテル旅館業界の意向に沿う形になった。その最大のポイントは営業日数を年間最大180日としたことだ。1年間で半年間しか営業できないということは不動産投資で考えれば利回り半減である。この規制で新たな不動産投資メニューの策定を目論んでいた事業者の多くが興味を失った。さらに最大180日規制には、各自治体が屋上屋を重ねることを許容した。その結果、国の示した基準以上の厳しい規制を施す自治体が急増したのだ。
日本国中で一番外国人観光客に人気がある京都市がその典型だ。民泊は住居専用地域内でも宿泊を認めるというものだったが、京都市が別途条例で定めたのは「住居専用地域内における民泊は毎年1月15日から3月15日までの60日間に限って認める」というものだった。つまり、京都市は180日規制を60日に絞っただけでなく、期間まで限定したのだ。京都に住む人ならおわかりになるだろうが、毎年1月15日から3月15日までの京都市内は一番寒さが厳しい季節だ。市内をウロチョロ観光するなどできれば避けたい頃。そんな期間中のみ「やってよろし」というのが、京都市が民泊に対して言い放った規制だったのだ。
民泊新法は「規正法」の色合いを強めた
同様の趣旨の規制は、他県でもある。長野県の軽井沢町では大型連休のある5月や7月から9月の夏季期間中の民泊禁止をうたうなど、民泊を行おうとする事業者ばかりでなく、民泊を利用しようとする宿泊客に対してもあからさまにNOを突き付けるといった内容のものである。
また各自治体では普通の個人では到底作成しきれないほどの複雑で多様な書類の提出を求めたり、提示された資料に難癖をつけるなどして民泊の実施をあきらめさせようとしているのではと疑われるような事例まで報告されている。
マンション管理組合の対応も素早かった。民泊新法が施行される前に管理規約を改正していないと、許可をとった部屋は民泊が合法化されてしまうとのことで、ほとんどの組合で民泊禁止がほとんど議論されることもなく可決成立した。
つまり民泊新法は当初目指していた民泊という新しい宿泊形態を法的にしっかり位置づけ発展させようという考えとは裏腹に、限りなく「規制法」としての色合いを強める代物になったのだ。