簡易宿所がビジネスホテルの需要を奪いつつある
民泊を封じて一息ついているホテル旅館業界にも暗雲が漂い始めた。簡易宿所である。簡易宿所とは旅館業法で位置づけられた宿泊形態で、ホテルや旅館よりも規制が緩い。以前は日雇い労働者が宿泊する宿という印象が強かったが、最近ではホステルなどといった名称で東京や大阪、京都などで急増している。内容はカプセルホテルと同様、トイレやシャワーを共用にして1部屋に複数の客が滞在するタイプのものが主流だ。
簡易宿所は住居専用地域では建設できないが、訪日外国人観光客を目当てにマンションデベロッパーや他業種、新興系企業が相次いで参入している。規制が緩いために宿泊のノウハウに乏しい業者でも容易に始めることができるからだ。厚生労働省の調査によれば2018年3月末の簡易宿所数は3万2451軒となり、対前年比2892軒の増加。対前年比で867軒減少して3万8622軒となった旅館数に匹敵するに至っている。
もともと特区民泊が認められている大阪市などでは民泊に加えて規制の緩い簡易宿所が急増していて、すでに市内のビジネスホテルの需要を相当数食い始めているとの報告もある。
さらに簡易宿所の勢いを増幅させそうなのが6月25日施行の建築基準法の一部改正だ。今回の改正ではこれまで延床面積100平米を超える建物をホテルや旅館、簡易宿所に用途変更する場合には確認申請が必要だったのが、基準が200平米を超える場合に緩和される。小規模建物で簡易宿所などへの変更がさらに増えることが容易に想像される。
民泊は思い切り規制を強めて事実上、封じ込めることに成功したホテル旅館業界やマンション管理組合だが時代の流れは速い。足元はすでに老朽化した住戸の空き家問題や簡易宿所という強烈な波にもまれ始めているのだ。