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世界での戦いは「憧れ」ではなく「当たり前」

 20歳といえば日本では大学2年生にあたる年齢だ。同年代で「世界」という言葉を口にする選手も多いが、聞き手の耳にはサニブラウンの口にする言葉は、そのリアルさがまるで違うように感じた。他の選手が世界で戦うことをどこか「憧れ」を持って口にしているのに対し、サニブラウンにとってはそれが「当たり前」「しなければならないこと」と自然に考えているように見えたのだ。

 日々、アメリカの強豪校で切磋琢磨し、日本ではそれだけで騒がれる100m9秒台の記録を持つ選手もライバルに多くいる。その環境が生む視点の高さは、海外に飛び出したからこそ得ることができたものだろう。

©文藝春秋

 日本新記録を出した全米学生選手権に関しても、日本での喧騒とは裏腹に、3位だった結果を振り返って優勝した選手との差を「ボコボコにやられた」と評する。

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 そんな経験は、サニブラウンのメンタル面も強くした。

「緊張は……もうほとんどしなくなっちゃったかもしれないですね。全米(学生選手権)はわりと緊張してはいたんですけど、むしろワクワクしていたのかなと思っていて。緊張というよりは『自分はどんな走りができるのかな』というワクワクの方が大きかったです」

「世界陸上ではメダルを狙えるまで目指したい」

 2年前は「大舞台で緊張してしまうのはしょうがない部分もある」と口にしていたが、多くの経験を経て、精神的な部分も一段階進化していたのだろう。

「正直、いっぱいいっぱいですね。いやぁもう『やっと終わった』って」

 レース後、そう語っていた2017年とは心身ともに余裕度がまるで違う。続く200mでもさらなる変化を見せてくれるのだろう。

2位の桐生祥秀、3位の小池祐貴を抑えて表彰台のトップに ©文藝春秋

 9月にドーハで開幕する世界陸上では、日本人初の100mファイナリスト、そしてメダル獲得も視野に入ってきた。

「しっかり自分のやってきたことを試合で出せないとまったく通用しない。世界レベルの100mというのはそういうものなので、そこでしっかり自分の持ち味を出せるようにしたい。世界のトップレベルの選手は、そういうところで強さがあると思っているので、速いだけではなくて、強さも求めて行ければいいかなと思います。世界陸上では100mはしっかり決勝に残って、メダル狙えるところまでまた練習を積み上げて行ければと思います」

 未踏の道を行く20歳には、まだ限界は見えていない。