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若手の「駿太」から大人の「後藤」に オリックス・後藤駿太の顔つきが変わった瞬間

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/07/27
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「大人になったんだな駿太は」と思う瞬間

 そして、今シーズン開始当初、彼に与えられたのは、代走と守備固めの役割だった。守備には圧倒的な定評のある後藤であるから、納得のできない使い方とは言えないものの、甞ての彼への大きな期待を知る者としては、正直寂しい思いは隠せなかった。しかし、そこから4カ月。「駿太」は予想以上の活躍を見せている。既に出場70試合、打率.252(7月24日現在)。貧打に泣くオリックスにおいて、代打中心の起用でこの成績は、大健闘だと言うべきであろう。

 とはいえ、彼のチームでの役割は代打と代走、そして守備固めだけではない。オリックスファンなら誰しも、「駿太」がイニング毎に守備位置から戻って来る選手をベンチの前に立って、迎えている事を知っている。そしてその時の彼の表情はいつの間にか、ベテランのレギュラー選手を丁重に迎える「若手選手」のそれから、若返ったレギュラー陣を激励する「中堅選手」のそれに変わっている。2011年に入団した彼も今年で9年目の26歳。年齢こそ「中堅」だが。チームでの在籍歴においては、彼よりも長くこのチームにいる選手は、岸田、比嘉の両投手とT-岡田の3人だけになっている。だからこそ、チームでの役割とそれに応じて「顔つき」が変わるのも当然だ。「大人になったんだな駿太は」。そう思うのは、彼がエラーをした選手に声をかけ、何とか失点を防いだ投手を激励するたくましい姿を見せてくれる瞬間である。

 でも、思う。大人になった「後藤」も良い選手だと思うけど、我々はまだあの「駿太」が見せてくれた無限の可能性を見てみたい。「行け!走れ!Go!駿太!」ではじまる応援歌が歌われる時、京セラドームのライトスタンドから聞こえる声は今でも一際高い。その彼が活躍してヒーローインタビューで無邪気な笑顔を見せてくれるのを、スタンドでずっと待っているのは、大ファンのうちの娘だけではない筈だ。

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