第3次ブームではタピオカの品質が“売り”に
ブラックタピオカがドリンクに入っているという形式は、2回目のタピオカミルクティーブームと同じだが、今回の特徴は、タピオカ自体の品質を各店がアピールしていることだ。“店内で手ごね”とか“職人の手揉み”とか“作って1時間以内のできたて”等々、ことさら手作りであることが宣伝され、実際、食べごたえ(噛みごたえ)はかなりなもの。タピオカでんぷんの調理技術が進歩し、多様なもちもち感が出せるようになった。
また、茶葉やミルク、砂糖の品質にもこだわって、ドリンクとして本格的でおいしくなった。紅茶だけでなく、ほうじ茶、緑茶、抹茶、ウーロン茶、ジャスミン社と、茶の選択肢が増え、カラフルなフルーツジュースやスムージーで作る店もある。
ゼリーやアイスクリーム、フルーツ、チョコレートなど、トッピングの種類も増え、見た目がぐっと華やかになってSNS映えがするのも、ブームの大きな要因だ。「#タピオカ」を含むインスタグラム投稿の数は、この原稿を書いている6月末現在で、135万件超え。画像は、分け入っても分け入っても黒い粒の山だ。カップのデザインはおしゃれで、中身も派手でかわいいが、店によって極端な違いはないように見える。
クオリティーが高くなったぶん、1杯が400円から600円と、値段も前回よりずいぶん高級化した。トッピングによっては700円に達することもあるが、カフェでコーヒーとケーキを頼むのと同じか、若干安く上がる価格設定が絶妙だ。
かつては「貧乏人の食べ物」だった
タピオカの原料であるキャッサバは、中南米原産の多年生植物で、三角貿易でアフリカに伝播した。奴隷の食糧だったことや、痩せた土地で栽培されたことから、かつて「貧乏人の食べ物」と蔑まれた悲しい歴史を持つ。逆に、土壌を選ばず乾燥した気候でもよく育ち、繁殖が容易なことが再評価され、この半世紀で生産量が急増した。
現在、全生産量の半分がアフリカで、残りの4分の1ずつが東南アジアと中南米。アフリカではトウモロコシに次ぐ第2の主食になっている。作付面積当たりのカロリー生産量があらゆる穀物・イモ類中ナンバーワンで、収量が多い。食料不足解決の切り札になる、重要な作物なのである。
タピオカドリンクの背景にある、そんな話を知って飲めば、ありがたみが増すのではないだろうか。ともかく、タピオカは思った以上にすごい食べ物なのである。