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“海から見た陸”の姿が感動的だった

満島 舟漕ぎの方が「舟を漕いでいる最中は自分の下半身はほとんど海の生物なんだ」とインタビューでおっしゃっていました。先生も草の舟や竹の舟に実際に乗って、出発前に考えていたことと乗ってみて思ったことと何か違いましたか。

海部 僕はプロジェクトリーダーで実際の航海の漕ぎ手ではないのですが、舟に乗ってみると、やっぱり景色が全然違うんですね。エンジンの付いた普通の大きな船に乗っているときとは違って、小さな舟では水面ギリギリで大きなうねりが目の前にバーッと来て、時にイルカが来たり。それから“海から見た陸”もまた感動的です。台湾で実験を進めているんですけど、普段は台湾の陸から海を見ますよね。だけど舟で海に出て、そこから陸に戻っていく。その自分たちの故郷に戻っていくとき、陸の姿というのは、とても感動的なんです。

丸木舟作りには「没入できる楽しさがある」と語った満島さん ©深野未季/文藝春秋

「海に憧れた人たちがたどり着いたから日本人が存在する」

満島 やっぱり大地を歩けるホモ・サピエンスの血が騒ぐというか、やっと歩けるぞみたいな感じの気持が高ぶってくるんですかね。

海部 そんな気持ちがあります。そんなふうに体験してわかること、感じることは本当に多いです。ほかにも例えば、先ほど言ったように最初、草束舟でうまくいかなかった。台湾での竹筏舟もあまりうまくいかなかった。でも失敗の次にできたものがあると「これならどこまで行けるのかな」という小さな挑戦心の芽生えを感じます。

 祖先たちも同じように失敗しながら、新しい経験を積んで、どんどん技術が上がって、新しいものを作ったはずで。遠くまで行くというのは、帰ってくる自信があるときにできることだと思うんですね。だから見えないのに「向こうに島があるはず」と闇雲に出ちゃったという、男の冒険譚ではきっとないんですよ。そんな男の無謀な挑戦に女性はついてきてくれないでしょう。祖先たちはやっぱり、島の存在を知った上で自信があって海に出て行ったんだと、実感としてこう思っています。

満島 そうですね。何度も、何度も失敗を繰り返し、何度も行っては戻ってというのを繰り返して、先人たちもたどり着いたはずですよね。日本は島国ですから、海に憧れて、あの先には何があるんだろうって、たどり着いた人がいるから、いま私たちが存在しているわけですもんね。

海部 そうなんです。僕らは3万年前の人たちについて、考え方を変えなければいけないと思います。もちろん当時の技術は原始的だけれど、彼らはその技術をもって、新しいことに挑戦して、新しい世界を切り開いた人たちなんだなというのをいますごく感じていますね。

日本人はどこから来たのか? (文春文庫)

海部 陽介

文藝春秋

2019年2月8日 発売

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