西安餃子、その影響力
森本稀哲、岸孝之、菊池雄星。引退、FA、メジャー挑戦と理由は様々だが、いずれの選手もプロデュースグルメ発売の数か月後にライオンズを離れている。
つまり、まとめるとこういうことだ。
「西安餃子でグルメメニューをプロデュースした選手は、全員ライオンズを退団する。しかも、発売から退団までのスピードは加速しており、直近三例においては、皆数か月後に退団している」
なぜ西安餃子に限って、このような異常事態が起こるのか? いくつかの仮説を挙げてみよう。
①西安餃子は、チームを去る選手を当てることのできる、ある種の予知能力がある
②西安餃子は、選手本人から「チームを去る予定なのだが、最後にグルメをプロデュースさせてほしい」と希望されるケースが多い
③西安餃子は、選手を退団させる磁場が発生している
④偶然
④の抗いがたい強烈な説得力に、つい納得してしまいそうになるところをグッとこらえ、敢えて他の仮説を掘り下げてみたい。
まず①だが、球団を去る選手が分かっているならば、むしろその選手のプロデュースグルメの取り扱いを避けるのではないだろうか。これまで西安餃子から販売されたプロデュースグルメは、いずれも好調な売れ行きを示していた。特に岸や雄星のメニューには、日頃同店では見られない行列が頻繁に見られていた。せっかく手間隙かけてヒット商品を開発販売しておきながら数か月で手放す、などという愚行を、誰が進んで行うだろうか? そう考えると、①はありえない、という結論になる。
次に②であるが、かつて選手としてライオンズに在籍した石井一久氏が、試合前に売店にカレーや串焼きを買いにくるなど、意外と選手は球場で食事を購入しているようである。選手の中に西安餃子の強烈なファンがいたって不思議ではない。「最後の最後に、自分が本当に食べたかったメニューを出してほしい」。そう希望する選手もいることだろう。稀哲が「西安餃子の麺に麻婆豆腐をかけたグルメを応援してくれたファンのみなさんに食べてもらわないと、現役を辞めるに辞められない」とか、岸が「寒い仙台より、緑に囲まれたメットライフドームこそ、パクチーを大量に使ったグルメをプロデュースするのにふさわしい」と考えるのは有り得る話である。
③について、西安餃子は1、3塁側の同じ位置に店舗を一軒ずつ構えている。つまり、メットライフドームのグラウンドは二つの西安餃子に挟まれている、ということになるのだ。このグラウンドの両側の西安餃子から出る、何らかの何かが選手になんだかんだ影響を与えている、とは考えられないだろうか?
残念ながら筆者は科学に疎いため、この説を立証する術を知らない。しかしいつしか、この仮説が日の目をみる瞬間が訪れるかもしれない。すべてはその時に明らかになることだろう。
西安餃子、その予言
以上に挙げた①~④は飽くまで仮説に過ぎない。現在我々が解っていることは、西安餃子からプロデュースグルメを出した選手達は続々とチームを離れていく、という事実だけである。そして、その事実から危惧されることがある。それは、「今後、西安餃子からプロデュースグルメをリリースした選手は、早々にチームを去るのではないか」ということである。そんな状況下、西安餃子から4月に発売された新しい選手プロデュースグルメがファンを震撼させる。
秋山翔吾選手プロデュースグルメ「SHOGO MEN!!!」
3年契約の終わる2019年オフ、秋山選手がメジャー移籍を希望するのか否か。かねてからの懸案に、ニュースでもネットでもなく球場の売店から決定的な情報を突き付けられる格好になったファンは、涙を流しながら具だくさんでボリューム満点の中華麺に舌鼓を打っている。悔しい、でも美味しいって感じちゃうズルンズルン(麺をすする音)。
ともあれ、中心選手の動向の鍵をいつの間にやら握ってしまった西安餃子を、我々はこれからも注目し続けざるを得ない。
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