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 さらに、銀行の積立式の年金保険にも2つ加入していて、63歳になる2027年には、それぞれ1億ウォン、合わせて2億ウォン(約1800万円)のまとまった金額がはいってくるという。

 これだけみれば十分に余裕のある生活ができるだろうと思うが、韓国は物価が年々上昇しており、「病気などどんな事態が起こるか分からないですから、日本の2000万円問題のニュースを知って、積立預金を始めるとか、今の家を売って少しでも安いところに移って差額を元にもうひとつ単身者向けのマンションを購入しようか検討中」と話す。

 今年初めから不動産市場が停滞しているといわれているが、それでも韓国では不動産投資は根強い人気で、別の50代の知り合いの夫人は毎週のように不動産セミナーに参加して資産をどうすれば増やせるか余念がないそうだ。

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定年退職後も働く人は半分以上

 この知り合いの場合は恵まれたケースで、だからこそ話してもくれたのだろうが、国民年金受給者の半分ほどが現役時代から比べると生活レベルは落ちたと感じており、定年退職後も働く人は全体の半分以上にのぼる(ハナ金融グループ報告書)。

 以前、バイク便ならぬ「お年寄り宅配」の取材をしたことがあった。これは地下鉄が無料になる65歳以上の高齢者が軽量の荷物や書類を運ぶ仕事のことで、この仕事で月5万円ほどの収入を得ていた70代の男性がいた。

 企業に勤めた後、起業したがあまりうまくいかず、年金は夫人と合わせて3万円程度。彼らが受給しているのはは、年金に加入しそこねた65歳以上の低所得者層に支給する基礎年金(約9000円~1万8000円)で、2014年から始まった。

 この男性の場合、子供たちが生活費を補充してくれているので生活に不安はないと話していて、「月5万円でも孫たちにおこづかいもあげられるし、社会に出ていることは気分がいい」とも語っていた。

 こう書いてくると、ふと思う。

 日本も韓国もこれから到来する超高齢、そして超超高齢社会に耐えられるのだろうか、と。

 早いスピードで社会構造が変わる韓国のほうが意外に早く年金の本質的な議論が始まるかもしれない。