かつての儒教精神は遠い昔。「親世代は、大家族が多かったので、老後の面倒は同居したりして、子供がみてくれるものというのが当たり前でした。ですが、今は、自分たちの生活だけで精一杯。その時になったら考えよう、どうにかなるという友人も周りには多い。それだけ今の生活がたいへんなのです」(同前)。
韓国では老後3000万円が不足する?
韓国で国民年金制度が整ったのは1988年。日本で導入された1942年と比べると歴史は浅く、そのぶん年金の恩恵に与かれない世代もあり、「日本のように『100年安心の制度』なんていう概念はもともとない」(同前)。韓国の各メディアで日本と同じ条件(夫65歳以上、妻60歳以上共に無職の場合)で老後資金をシミュレーションしていたので実態を引用してみよう。いずれも平均値で、韓国の平均寿命で計算されている。
「国民年金と基礎年金を合わせた公的年金は85万ウォン(約7万7000円)、その他の賃貸収入などが21万ウォン(約1万9000円)。ここに貯蓄5371万ウォン(約483万4000円)から夫婦共に19年間、月に24万ウォン(約2万2000円)で暮した場合を想定しよう。月合わせて130万ウォン(約11万7000円)となるが、適正とされる生活費は243万ウォン(約21万9000円)といわれ、113万ウォン(約10万2000円)が不足する。もし、19年後に夫が先立ち妻だけがさらに8年間暮すと月76万ウォン(約6万8000円)足りなくなり、合計3億3060万ウォン(約2975万円)が不足となる」(朝鮮日報6月18日)
とある韓国人50代会社員の場合
では、老後資金を見直したという前出の50代の会社員の例をみてみよう。
中堅規模の企業に勤める55歳で、子女はひとり、年収は1000万円弱。子女はすでに社会人となり、こちらは互いに経済的負担をかけ合わないことで合意しているという。一般にイメージする韓国社会とかけ離れているように感じるかもしれないが、家族の在り方もどんどん変貌していて、それほど韓国社会の変化はめまぐるしい。
話を戻そう。この会社員は国民年金制度が始まった1988年に国民年金に加入し、支給開始年齢は63歳で、支給予想額は月180万ウォン(約16万2000円)だ。夫人は専業主婦(53歳)でやはり国民年金に入っていて64歳以降月50万ウォン(約4万5000円)が支給される予定で、ふたり合わせると230万ウォン(約20万7000円)が毎月の生活費となる。
旅行にも行きたいし、贅沢しなくとも余裕のある生活を維持することを目標としていて、40代半ばに単身者向けワンルームのマンションを購入し、貸し出している。こちらの家賃収入は毎月150万ウォン(約13万5000円)ほど。