令和の皇后となられ、ご成婚時の輝くような笑顔を、取り戻されつつある雅子さま。
新皇后の半生を徹底取材した決定版『皇后雅子さま物語』(文春文庫)から、新皇后の「あゆみ」を特別公開します。
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皇后から受け継がれた「ご養蚕」
2018年(平成30年)5月13日、皇居内にある「紅葉山御養蚕所(もみじやまごようさんじょ)」に向かう雅子妃は、車の窓を開けて、外で待機する記者やカメラマンに笑顔で手を振られた。
ご養蚕は「日本書紀」にも記述があり、豊穣を祈念する歴代の皇后陛下の仕事として147年にわたり引き継がれてきた。美智子皇后も良子皇太后から受け継がれ、一時は絶滅寸前と言われた純国産の「小石丸」という蚕を大切に育ててこられた。
前年には天皇の退位が正式決定して、新皇后となる雅子妃もご養蚕を担うことになるため、その準備の一環として、皇后の思し召しもあり、見学が実現した。
「雅子妃は、皇后陛下から長時間にわたるご養蚕の見学ということで『無理はしなくていいから』と優しくおっしゃっていただいたことを喜んでいました」(宮内庁関係者)
雅子妃は蚕に桑の葉を与えられて、繭の収穫作業にもご関心を持たれていたそうだ。
お顔を見せることが少なくなっていた雅子さま
ご結婚当初にも、皇后の案内で御養蚕所を見学して、皇后のご養蚕への思いを直にうかがっている。しかし、ご療養のなかで御養蚕所にうかがう機会はなかったこともあり、「雅子妃は蚕に触れないのではないか」と懸念する声まであった。宮内記者が会見で確認すると、小田野東宮大夫は、「そんな話はきいたことがない」と、きっぱり否定した。
「秋篠宮家の女性皇族方が養蚕のお手伝いをされたことと比較されたのかもしれませんが、雅子妃の場合、皇太子妃というご身位があり、皇后陛下が重んじておられる仕事に関わるのは難しいのではないか。美智子皇后も、ご養蚕を受け継がれたのは平成に入ってからです。それに雅子妃は生物を怖がるどころか大好きですから、蚕に触れないなんてことはありえませんよ」(宮内庁関係者)
本書でも書いたとおり、雅子妃は幼いころからハツカネズミや犬を飼っていた。小学校では「生物部」でイモリを飼い、早朝に登校してウサギ小屋の掃除をして遊ばせていた。ご結婚後も、東宮御所で見つけたカタツムリやカメをたくさん育てられ、クワガタムシは皇太子と幼虫をプラケースで飼って、繁殖までされていた。
宮内記者も世代が若返るなかで、雅子妃が虫好きであることも忘れられるほど、肉声が聴かれる会見から遠ざかっているということでもあった。