雅子さまの握手の上からそっと陛下が手を添えた時
9月21日に墨田区の高齢者施設「東京清風園」を慰問された時のこと。雅子妃は入所者の女性からアルパカのマスコットを手渡されたのだ。皇族が直接に贈りものを受け取るのはあまり見ないが、雅子妃は受け取られた。移動する際にそのマスコットをカメラに向かって見せて、実に嬉しそうになさっていた。
九州北部豪雨の被災地訪問のため福岡県を訪れた際には、雅子妃ならではの国民との寄り添い方も見られた。被災者代表で車椅子に座っていた女性の手を握って、
「冷たいですね。大丈夫ですか。寒いところ来ていただいて……」というと、雅子妃の手の上から、皇太子もそっと手を重ねられて微笑んでいた。
お見舞いは予定時間を過ぎていたが、雅子妃は後ろで待機していた80人の被災者のもとにも歩み寄った。
「お身体には気を付けてくださいね。見守っていますから」
「大丈夫ですか。お困りのことはございますか」
と声を掛ける。
被災者の女性の一人は、
「ご病気なのに来ていただいて、有難うございます。頑張りますので雅子さまも頑張ってくださいね」
と逆に励ましていた。
「必ず目線を合わせる」雅子さまの辛いご経験が活きた証
障害児施設や医療施設などでは、子どもたちに声を掛けて励まされるだけではなく、その様子を見ていた家族も労(ねぎら)うなど、視野を広げて目線を合わせられている。
福岡県新宮町の障害児童向け医療型障害者入所施設「粕屋新光園」でも、手術後に歩行訓練をしていた9歳の少女に、
「よく頑張りましたね。笑顔が可愛いですね」
と声を掛けられた。
「少女は人がたくさんいたことから緊張もあって、すぐに言葉が出なかったんですが、そんな様子を察していただいて、その子が質問に答えやすいように話しかけられていました。少し離れたところにいたお母さんにも気遣われるなど、予定時間をオーバーしても、相手の言葉を引き出し、やさしく触れ合っていただきました」(福岡真二園長)
雅子妃の公務は癒しながら癒される。先の見えないご病気という自らの辛いご経験があるからこそ、苦境にある人と互いに気持ちを触れ合えるのだろう。ゆっくりとでも回復されていくお姿をありのままに見せるだけでも、励まされる人は、確実にいる。
苦しまれた日々は、確実に財産となっていた。