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公安警察による監視を強化しなければならない

 本来、与国(同盟国)の駐在武官のスパイ事件をあげつらうことは、常識外の振る舞いである。これまで日本の公安警察がスパイ事件として挙げてきたのは、旧ソ連や今日のロシアの駐在武官であった。韓国の駐在武官が「ペルソナ・ノン・グラータ」として日本から追放された話など聞いたことがない。

 もっとも、韓国は「日本は与国ではない」と考えているのかもしれない。このように韓国が日本の防衛駐在官のスパイ事件をあげつらうのであれば、相互主義の原理を当てはめて、韓国の駐日駐在武官に対する公安警察の監視を強化しなければならないだろう。

 いずれにせよ、これからの時代、在韓日本大使館に派遣される防衛駐在官は、心して振る舞わなければならない。

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 とはいえ、今後の防衛駐在官たちの活動が制約されることになってはならない。防衛駐在官は、我が国を防衛するための情報収集活動をしていくべきなのだ。その観点から敢えて申すならば、私は今回の報道を知り、私の後に続く韓国の防衛駐在官たちが、わが国の安全に資する北朝鮮関連情報を積極果敢に収集していたことを知って、心から喜び満足している。

福山隆氏 ©文藝春秋

2人の防衛駐在官の辞職などもってのほか

 気がかりなのは、今回事件に関わったとされた2人の駐在武官は帰国後、私と同様に冷たい仕打ちに遭っている可能性があることだ。諸外国と異なり、日本の行政組織は情報の意味や価値を深く理解していないが、ソウルで奮闘した2人の防衛駐在官の処遇を誤らないことを祈るばかりだ。

 かつて、わが国には明石元二郎という軍人がいた。明石大将は1902年に当時のロシア帝国の駐在武官として着任した。1904年に日露戦争が開戦すると、明石大将の勤務する在ロシア公使館は中立国スウェーデンのストックホルムに移転した。明石大将はストックホルムからロシア国内にいる反体制側の様々な人物と接触し、ロシア革命を煽った。その結果、ロシア軍の満州増援を阻み、日本の勝利に繋がったとも言える。

 今、世界中で頑張っている防衛駐在官たちには、明石大将のように、帰国後も我が国の安全保障のため大いに活躍してもらいたいと願っている。

 繰り返すが、今回、韓国側から問題とされた2人の防衛駐在官たちの辞職などはもってのほかだ。


 福山隆氏も参加した「文藝春秋」4月号の座談会、「『日韓断交』完全シミュレーション」では、元韓国大使の寺田輝介氏、韓国富士ゼロックス元会長の高杉暢也氏、同志社大学教授の浅羽祐樹氏、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が登場し、現実的な「日韓のあり方」を詳細に検討している。

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