阪神タイガースのマスコットキャラクター「キー太」は、ウィキペディアによれば「やんちゃで活発な男の子」だそうだ。だからなのか、たまに目が合うと自転車のハンドルを握るような仕草をしてくる。“やんちゃな”絡みに「チャリンコじゃなくてチャリコな」とマジメにツッコミを入れるのだが、ツイッターのアカウント名(@sponichi_endo)がキー太にまで浸透していることは正直、嬉しい。最近は「チャリンコ」でも良かった気がしてきているが……。
無駄話をもう少し続けると、文春オンラインで5月31日に配信された「新聞が売れない時代に……なぜスポーツ紙記者がツイッターを始めたのか」は、取材現場でも少なからず反響があった。当日、広島戦に備えマツダスタジアムで練習を見ていると立命館大学相撲部出身でキー太並に愛嬌のある長谷川(矢野監督からは“ちゃんこ”と呼ばれている)が140キロの巨体を揺らしながら微妙な表情で声をかけてきた。
「めっちゃ怒ってます……」 先輩記者からの呼び出し
「内田さんが呼んでます。文春の記事にめっちゃ怒ってます……」
内田雅也記者は、関西版スポニチのコラム「追球」を執筆する編集委員。「追球」は日々のタイガースの試合を中心に、時に野球選手の人間臭さ、内面にも深く焦点を当てた看板コラムで一般読者だけでなく阪神チーム内でも愛読者がいる。
筆力、経験……なにもかも自分を上回る、チャリコにとってはまさに「真鯛」のような存在。正直、記者歴10年足らずの自分が書いたある意味、スポーツ新聞の現状を悲観するような生意気な文章や、ツイッターを駆使する理由などは長く業界に身を置く人には受け入れられないだろうし、内田さんに限らず、批判や怒りは覚悟していた。だから「やっぱり来たか……」と特に動揺もせず、ベンチに座る先輩の元に駆け寄ったのだが……。
「素晴らしい。内容も構成も良かった。おもしろかったよ」
なんだこの展開は……。振り返れば、あの長谷川が笑っている。もちろん、内田さんは知るよしもないのだが、スポニチ虎番チームが僕に仕掛けた“ドッキリ”だったのだ。それでも、覚悟を決めたと言いながら、好意的な反応に内心ホッとしている自分がいたのも事実。大先輩の言葉にも強く背中を押されて、より一層“ツイッター記者”の自覚を強くした。
実際、紙の売り上げアップにつながっているかは不明だし、増えていても微々たるものだろう。まだまだ「無駄な抵抗」と言われても仕方ない。最近は、カメラを向けた選手には冗談半分に「この写真“1いいね”でいくらもらってるんですか?」と穿った見方をされることも増えてきたが、昨年3月から1万回以上ツイートを積み重ねてきて「読者やフォロワーから求められるもの=チャリコのつぶやくべきこと」は何となく掴めてきた気がする。
新聞記者にとって一番の表現場所となる紙面ですべてを伝えることが理想でも、現場には掲載するには少し“毛色”の違うコメントが結構、落ちているもので、時にそんな何気ない言葉や言動に本音がにじんだりする。