雄平がスタメンから外れて久しい。今季は2年目の村上宗隆を筆頭に、ルーキーの中山翔太、プロ4年目の山崎晃大朗、廣岡大志、5年目の太田賢吾ら、若手の台頭が著しく、チームの新陳代謝が著しい。小川淳司監督にその点を問うと、「今後を見据えて、チームの若返りも意識しなければならないと思っています」と語っていた。

 昨年のヤクルト外野陣は、レフト・バレンティン、センター・青木宣親、ライト・雄平という布陣だった。ともに1984(昭和59)年生まれで、当時34歳のバレンティンと雄平。そして82年早生まれで36歳の青木と、ベテラン勢が主役を務めていた。今年もバレンティン、青木はレギュラーを務めているものの、ライトには雄平ではなく、最近では山崎や中山が入ることが多くなっている。小川監督の狙いや意図もわかるけれど、正直に言えば、「やっぱり、雄平が見たい」という思いも、僕の中にはある。

「自分にはまだまだ伸びしろがある」

 今年の開幕直後、雄平にインタビューをした。この時点では悪夢の16連敗を喫する前で、チームは首位と僅差の2位につけていた頃だった。それだけに雄平の言葉は力強く、希望に満ちあふれたものばかりだった。

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「今年は、昨年以上に投手と野手が一致団結して戦えていますね。去年は2位だったけど、首位のカープとは大差がついていたので、まだまだ僕たちは力不足だと思っています。1位になるためにはもっとレベルアップしないといけない。そんな思いを持って、今年の開幕を迎えました」

 開幕直後は五番を任されることが多かった。二番・青木宣親、三番・山田哲人、四番・バレンティンに続く五番打者。雄平は自らの役割について、こんなことを語っていた。

「僕の前を打つ、青木さん、山田、バレンティンの出塁率が高いので、常に誰かが塁上にいる場面で打席が回ってきます。だから、チャンスでの勝負強いバッティングが、自分には求められているのはよく理解しています。チャンスで結果が出ると、お客さんの歓声がひと際大きくなるので、その瞬間はたまらない喜びですね。常に“1点でも多く点を取りたい”、“チャンスは絶対にものにしたい”、そんな思いで打席に立っています」

 プロ16年目となった昨年、雄平はキャリアハイとなる、打率.318を記録し、得点圏打率も.356と見事な成績を残した。だからこそ、34歳にしてもなお、「自分はまだまだ伸びる」と力強い言葉を口にした。

「今年でプロ17年目ですけど、自分にはまだまだ伸びしろがあると思っています。僕はとても不器用なので、なかなか上手にならず、今でも毎日が試行錯誤です。歩みは遅いかもしれないけど、それでも少しずつ自分がうまくなっている実感はありますね」

 投手として入団した雄平が、打者に転向したのが2009年オフのことだった。プロ選手としてのキャリアは今年で17年だが、打者に専念してからはまだ10年目。雄平の言葉は力強く、そして希望に満ちあふれたものばかりだった。

「自分にはまだまだ伸びしろがある」と語るプロ17年目の雄平

SNS上で繰り広げられる「#雄平かわいい」ブーム

 このときのインタビューにおいて、僕はヤクルトファンの中で話題になっている「#雄平かわいい」についても質問した。ご存じない方のために簡単に説明すると、練習中、試合中の雄平の仕草がとにかく愛らしいので、ファンたちがこぞって、「かわいい雄平」の姿をアップしたり、自分が目撃した雄平の愛らしい仕草についてツイッター上に投稿したりしているのである。試しに手元の携帯で「#雄平かわいい」と検索してみると、チームメイトとじゃれ合っていたり、ベンチ内で大声を出していたり、ニヤニヤしていたり、悔しがったり、喜怒哀楽を全力で表現している雄平の姿がアップされており、とにかく「かわいい雄平」のオンパレードなのだ。

――SNS上で話題になっている「#雄平かわいい」って、ご存知ですか?

 僕の質問に対して、雄平は首をかしげて「知りません」と語った。そこで、僕は「#雄平かわいい」について説明すると、白い歯がこぼれた。

「そんなハッシュタグがあるんですか? もうオジサンなのに(笑)。試合に夢中になっているので、別にかわいい仕草を狙っているわけじゃないし、無意識での振る舞いなので恥ずかしいです(笑)」

 35歳になった今年、プロ17年目のベテランに対して、「かわいい」というのは失礼なことなのかもしれないけれど、僕の目の前で頭をかきながら照れる姿は、まさに「#雄平かわいい」、そのものだった。