絶対的なエース1人より同レベルの投手2人、3人
気温40度の猛暑に過密日程。現在の高校野球を勝ち残っていくには、絶対的なエース1人よりも、高い同レベルの投手2人のほうが圧倒的に有利だと主張する。
「160キロを超える球を投げる佐々木君でも、連戦の中で常にコンディションを整えていくのはなかなか難しい。近年は異常気象などで苛酷な環境下で連戦をこなさなければいけない。かつてとは気候環境がずいぶん変わったと思います。
そんな中では、同じレベルのピッチャーが2人、3人いるチーム作りをしていかなければ、甲子園どころか地方大会も勝ち進めない。最近の甲子園常連校には、昔のように突出した1人のエースが投げて勝ち進んだチームはあまりいないでしょう。ほとんどの強豪校が継投で勝ち上がってくるのはそのためです」
先日の高校野球愛知大会では、愛工大名電や中京などの強豪校を破り、ノーシードから誉高校が勝ち進み、甲子園初出場を決めた。やはり、勝因は“投手の分業”にあったと中村氏は分析する。
「左右のいいピッチャーが2人いて、8試合中7試合を5回と4回に分担して継投で勝ってきた。おそらく今年の甲子園は星稜の奥川(恭伸)君が注目されていますけど、彼だって5試合を1人で投げるというのは大変でしょう。そういう時代なんだよね。これからの指導者は大変だと思います。
来春に導入される予定の『球数制限』を機に高校野球は大きく変わるでしょう。例えば100球前後で投げられるのは6回か7回。その後の抑えのピッチャーが1人か2人必要になる。しかし、頼れるピッチャーを2人育てるのは非常に難しいこと。ピッチャーは高校になってからできるものじゃなく、素材だと思います。いい素材をどうやって集めるかというスカウティングがテーマになってくる。
今回の件で、夏の大会の時期や地方大会を前倒しして6月から始めたらどうか、という意見も出ているようですが、これは難しいでしょう。高野連が進めているのは、”教育としての高校野球”ですから。生徒たちは野球だけやっているわけではなく、授業がある。今後はますます”投手の分業制”を徹底していく時代になっていくはずです」