アマチュア球界が育てた才能をプロはきちんと大成させているのか

 この夏、大船渡高校の佐々木朗希の起用法が大きな注目を集めたが、今後の高校野球で「甲子園の先」を見据えた指導が脚光を浴びるようになると、比例してプロの育成が問われてくるだろう。アマチュアが大切に育てた才能を、果たしてプロはきちんと大成させているのか。高校野球の取材をしていると、プロの育成力に疑問を抱く指導者の声を聞くことがある。

 例えば、2014年ドラフト1位で西武に入団した髙橋光成だ。2013年夏の甲子園優勝投手で、高卒1年目の2015年8月、4勝1敗で月間MVPを獲得するほどの才能を秘めている。

 しかしフォームが固まらないうちから先発ローテーションで投げた影響か、2年目以降に成績を落とし、右肩の故障にも悩まされた。今季飛躍の兆しを見せているが、1年目からある程度の時間をかけて計画的に育てていれば、今頃エースになっていたかもしれない。

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 西武に限った話ではないが、アマチュア球界が育てた才能を伸ばし切れず、ただ消費してしまうケースが日本のプロ野球にはあまりにも多い。メジャーリーグの投手は、25歳で飛躍すればいいと時間をかけて育てられるのが一般的であることを考えると、新人を「即戦力」と持ち上げるプロ野球の起用法や報道には疑問が残る。

 ただし現場を預かる首脳陣からすると、他に一軍で任せられる戦力がいない場合、時期尚早でも若手に投げさせるのは仕方ない面もある。目の前の試合で勝利を求められるからだ。

 だからこそ、球団の編成担当には的確な補強が求められる。一定以上の必要戦力を首脳陣に供給できないと、そのひずみは近い将来、しっぺ返しとして自分たちに返ってくるからだ。近年、西武の投手陣が思うように伸びていない理由は、FAによる主力の流出、そして補強がうまく行っていないことに大きな関係があるように感じられる。

 果たして、投手が育たない悪循環を止めることができるのか――。

 幸い昨季終了後、西武の編成トップは鈴木葉留彦本部長から渡辺久信GMに交代した。「西武ライオンズにITを導入した“企画室長”が明かす球団の野望」で紹介したように、グラウンド内外で球団の体制は変わりつつある。

 一方で他球団に眼を向けると、独自色を打ち出して過去10年のパ・リーグをリードしてきたソフトバンクと日本ハムに加え、楽天とロッテは新体制で魅力的なチームづくりを進めている。今季はソフトバンクの主力にケガ人が続出した影響で僅差の争いになりそうだが、来季以降、西武は対抗することができるだろうか。

 その上で不可欠になるのが、補強と育成が表裏一体の球団運営をできるかである。

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