インド出身の女性監督ロヘナ・ゲラの長編デビュー作『あなたの名前を呼べたなら』は、ムンバイで暮らす御曹司アシュヴィンとメイドのラトナが、互いの立場を超えて愛を育む恋愛映画。いわゆる“身分違いの恋”を描く一方、インドで今も残る身分制度や因習の変革を訴える映画でもある。

ロヘナ・ゲラ監督 © Macha Kassian-Bonnet

「幼い頃、私の家にもラトナと同じような住み込みの女性がいたんです。彼女は家族同然の存在だったのに、私たちの間には常に壁があった。食事をする場所も別々で、子供心にも何かおかしいと感じていました。違和感の正体に気づいたのは、18歳でアメリカに留学した時。そしてこの階級をめぐる違和感を物語にしようと決めたけれど、抑圧者と被害者という単純な構図にはしたくなかった。そこで浮かんだアイディアがラブストーリー。恋愛は、立場や階級を超えて、お互いを平等にしてくれるものですから」

 劇中では、性差別の実態や、女性の自立の困難さ、女性同士の友情も繊細に描かれる。

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「近年のインドでは、ボリウッドだけでなく多様な映画を受け入れる土壌が出来つつあり、女性監督も増えています。小規模でも良質な作品を若い世代に届けていきたいですね」

INFORMATION

『あなたの名前を呼べたなら』
8月2日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開
http://anatanonamae-movie.com/