この2つの白星はとてつもなく大きい。3連覇中の広島相手に開幕カード以来となる敵地での勝ち越し。4.5ゲーム差に突き放し、自力優勝を消滅させた。優勝から遠ざかっている巨人ナインにとっては勇気が湧き、王者カープには焦りとあきらめが生まれかねない結果。もちろんDeNAも侮れないが、5年ぶりの優勝がくっきりと見えてきたと言っていい。

 天王山だった3連戦のカギを握っていたのが1989年(~1990年3月まで)生まれの平成元年世代。つまり3戦目の先発だった菅野智之や野村祐輔の学年の選手たちだ。2人に加えて貴重な先制タイムリーを放った小林誠司、昨季まで広島の大黒柱だった丸佳浩、1、2戦で好リリーフを見せた高木京介、さらに菊池涼介、安倍友裕、田中広輔ら錚々たるメンバーがそろう。

平成元年世代の菅野智之と小林誠司

野球ならではの「世代」への意識

 野球ほど、いろんな意味で「学年」が注目されるスポーツはなかなかないだろう。サッカーでももちろん「世代」はあるが、北京五輪世代、ロンドン五輪世代というように、ある程度年齢の幅を持たせたカテゴリーでくくるのが一般的だ。

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 芸人の世界では芸歴が先輩後輩を決めるし、一般企業でも基本的には入社年次で序列が決まることが多い。だが、高校、大学、社会人、独立リーグなどプロ入りするまでのルートが多いプロ野球界では年齢、というより学年がすべてを決める。27歳のオールドルーキーAがたとえ育成選手として入ってきたとしても、26歳の主砲Bに対して「B」と呼び捨てにするし、Bは「Aさん」という風に敬語を使う。流動的な選手としての「格」や覚えるのが大変なプロでの経験年数などはまったく考慮せず、年齢で一括管理するのが合理的なのだろう。ちなみにこれはマスコミ関係者などに対しても同じで、選手の方も自分に敬語を使ってくるかどうかで自分より年上かどうかを見極めているようなところがある。

 それだけ年齢にこだわるからこそ、選手たち自身も同学年に対する思い入れは強い。古くは江本氏、平松氏、大矢氏らの昭和22年会、もっとも有名な松坂や村田らの昭和55年会など同世代の選手たちが球団の枠を超えて連帯する伝統がある(松坂と村田が出演し、伝説になること必至のお茶のCM「お前は俺ら世代の誇りだからよ。咲けよ、大輔」も二人が同学年のライバルであることが前提となっている!)。

 そしてもちろん、われわれ見る側も「世代」を強く意識する。近年でも松坂世代、ハンカチ世代、大谷世代など、同学年の選手たちを横並びにして比較するし、江川と掛布、桑田と清原という風に同学年のライバル対決には特別の感慨を持つ。