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甲子園が教えてくれた、野球に大事なことは「リスペクトの気持ち」

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/08/30

 この夏、甲子園の決勝戦で始球式をやらせてもろうて、あらためて大事なことを再認識させてもろうたね。何かゆうたら、リスペクトの気持ちよ。会場に行ってから投球に至るまで、何度もそのことを感じたね。履正社高の岡田(龍生)監督なんて、決勝戦の前にも関わらず、通路で会うたら「頑張って下さい」なんて声をかけてくれるんよ。選手たちも、そう。面識なんてないのに、みんな気持ちのいい挨拶をしてくれる。そして、星稜高の奥川(恭伸)投手ね。大決戦を前にして、始球式のワシにピシッと挨拶してくれた。リスペクトの気持ちよね。本当に素晴らしいと思ったよ。もちろん、ボールも凄いのを投げとったね。

甲子園決勝の始球式に登場した達川光男氏 ©時事通信社

「プロ野球は来年もある」なんていうことではない

 試合前に両校が並んで挨拶する姿を見ると、ワシの46年前を思い出して、思わず涙腺が緩んだね。試合後もそうよ。なかなかスタンドから高校野球を見ることもなかったけど、両校が自分のチームの応援団はもちろん、相手の応援団にも挨拶するんよね。敗れたチームも悔しい気持ちでいっぱいじゃろうに、そんな中でもいろんな人に感謝を伝える。もちろん、勝った履正社も苦しかったと思うよ。勝ったチームも涙、負けたチームも涙。比べてもあれじゃけど、勝ったチームも苦しかったと思う。勝つことの苦しみに感動させてもろうた。そんな状況でも、しっかり周囲に感謝を伝える。感謝、感謝、というけども、現実に形として目にすると、感じるものがあるよね。野球に携わった人間としては、全てが嬉しい光景じゃったね。日本独特の甲子園、礼に始まり礼に終わる。大事なことじゃと思うね。

 で、プロ野球よ。ペナントレースも佳境に入って、残り試合も少なく、優勝争いから外れるチームも出てくるよ。でも、考えてみたら、ペナントは上位だけで戦うのでなく、下位チームの戦い方にも左右されてくる。上位チームの試合も大事、でも、下位チームの戦いも大事ゆうことよ。「プロ野球は来年もある」なんていうことではないんよ。高校野球は負けたら終わりのトーナメント、その気持ちよ。今日しか野球を見に来られない人もいる。今日のプレーに生活がかかっている選手もいる。今日は、今日の野球。あらためて、そんなことを思うね。

 セ・リーグは8月24日に、ジャイアンツにマジック20が点灯。でもマジックはマジック。ついたり消えたりするものだから、まだ優勝が決まったわけではない。それから、やはり気になるのはカープよ。4連覇の目標があってスタートしたけど、大型の連勝連敗、厳しいところはあるが、まだチャンスもあるし、今の制度ではCSから日本一へのチャンスだってある。