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「メラニアは皇后さまを大変尊敬しています」

 トランプ大統領のふだんの言動から、両陛下や皇族に対して失礼な振る舞いがなければいいが、と心配する声が一部にある。しかしその心配はないと思う。すでに“予行演習”をしており、同大統領も日本の皇室のありようもしっかり勉強しているからだ。

 同大統領は2年前の2017年11月、当選後初のアジア歴訪で日本を訪れた。このときトランプ大統領とメラニア夫人は、天皇、皇后だった現在の上皇、上皇后のお住まいの皇居・御所を訪れ、懇談している。

宮内庁提供

 トランプ大統領は天皇に「お会いできて大変光栄です」と述べ、天皇は「お気持ちをうれしく思います」と応じ、懇談は和やかに行われた。天皇は大統領と通訳を介して、皇后はメラニア夫人と英語で話した。天皇は大統領に「両国はかつて戦争をした歴史がありますが、その後の友好関係、米国の支援で、今日の日本があると思います」と感謝を表明している。懇談後、両陛下は御所の車寄せまで見送ったが、トランプ大統領は皇后に「メラニアは皇后さまを大変尊敬しています」と語った。これはお世辞ではないだろう。

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 懇談に同席した宮内庁関係者は「大統領は日本の皇室の歴史や、天皇陛下の日本における位置付けをしっかりと認識し、敬意を払って対応された」と語っている。トランプ大統領夫妻は訪日前のブリーフィングで美智子皇后が皇室で果たしてきた役割を知り、特に同じ立場のメラニア夫人は尊敬の念を強めたと思われる。

宮内庁提供

トランプ大統領はミニマリズムの美をどう見るか

 今回、トランプ大統領は初めて皇居・宮殿に足を踏み入れ、晩餐会などのもてなしを受ける。同大統領がどのような印象を受けるか興味深い。というのは皇居・宮殿に初めて足を踏み入れた外国の賓客の多くが、その雰囲気に強い感銘を受けるからだ。

 世俗的な欧州の王室にはない鎮まって凛とした空気。広い大きな空間に余計な装飾は一切なく、品のいい花瓶が一つ置いてあるだけ。贅沢な装飾をこれでもかと重ねていく米欧のインテリアとは対極にある、質実で堅実なミニマリズムの美だ。そこに日本人の精神的ありようを見る賓客は多い。安全保障、経済、貿易など、日米の懸案は横に置いて、トランプ大統領にとって日本再発見の機会になるのではないか。

宮中晩餐会が開かれる宮殿の豊明殿 宮内庁提供