2019年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。国際部門の第4位は、こちら!(初公開日 2019年5月28日)。

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「文在寅大統領! なぜ韓国政府は日韓基本条約のお金を被害者や遺族に渡さないんですか? 答えてください!」

 5月7日、晴天が広がるソウル。韓国大統領が暮らす大統領府(通称・青瓦台)の通用門前では大音量の演説が響き渡っていた。

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「被害者の気持ちを韓国政府に伝え続ける必要がある」

 演説を行っていたのは日帝被害者報償連合会・会長のキム・インソン(金仁成)氏だった。同会に登録しているのは約1万人、太平洋戦争における在韓被害者団体としては有力団体の一つだという。キム氏の周りには10名ほどの会員や支援者が取り囲んでいた。道路ではサングラスをかけた警備警察官が鋭い視線をデモ隊に投げかけている。

 道路にはデモ隊が立てかけた〈韓日会談 一般請求権問題〉というパネルが並んでいた。

 演説を終えたキム氏に話を聞いた。

「毎週火曜日、私たちはデモを青瓦台前で行っています。誰かが被害者の気持ちを韓国政府に伝え続ける必要があると考えて、このデモを行っています」

 キム氏自身も父親がインドネシアなどに従軍した旧日本軍・軍属だった。キム氏は多くの太平洋戦争の被害者、遺族と交流しているうちに、韓国政府の責任を痛感するようになったという。

青瓦台前の「火曜日デモ」(筆者撮影)

韓国政府は補償資金をインフラ投資等に回した

「日本の外相は日韓基本条約に基づいて韓国政府が払うべきと話しています。だから日本政府には条約の交渉記録を明かして欲しいと文書を送っています。補償金額が明らかになれば、それに基づいて韓国政府は相応の金額を被害者や遺族に渡すべきだと要求することができる。このデモは2018年にスタートして、今回が57回目です。しかし未だに韓国政府からは正式回答がありません」

 日本と韓国政府は1965年、日韓基本条約を結んだ。そのときに協議した日韓請求権協定に基づき、日本政府は無償3億ドル、有償2億ドルの計5億ドル(当時のレートで約1800億円)を韓国政府に提供している。

 条文には〈日韓両国とその国民の財産、権利並びに請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決されたことを確認する〉とあり、植民地時代の賠償問題はこれで解決したとされた。韓国政府はこの補償資金をインフラ投資等に回し、“漢江の奇跡”と呼ばれる経済発展を遂げたことは周知の事実だ。