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「精神状態を維持していくのがやっと」

 ある患者Aさん(当時40代)は、腰痛がなかなか治らないためMRIを撮ったところ「椎間板ヘルニア」と診断され、手術を受けることになりました。ところが、術後しばらく経っても痛みがとれないため、次に背骨を固定する手術を受けました。しかし、下半身の痛みとしびれが悪化。歩けなくなって結局は車いす生活を余儀なくされるようになりました。

 また別の患者Bさん(当時40代)は、太ももの裏側の痛みが取れないため病院を受診。椎間板ヘルニアと診断され、手術を受けました。「こんなものは手術で簡単に治る」と執刀医に言われたそうですが、その言葉とは裏腹に手術は失敗。右足に行く神経を切断されて、松葉づえがないと歩けなくなってしまいました。痛みで右足を地面につけることもお尻をつけて座ることもできなくなり、「精神状態を維持していくのがやっと」と語っていました。

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 お二人とも腰椎(腰)の椎間板ヘルニアで、頸椎(首)が悪かった名倉さんとは異なります。また、名倉さんは「手術の経過は良好」とされているので、Aさん、Bさんのように手術自体に問題があって、後遺症が残ったのではないのかもしれません。とはいえ、名倉さんが手術を受けたのは1年以上前です。手術に何か問題があった可能性もゼロとは言い切れないのではないでしょうか。

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100%の手術をしても、100%よくなるとは限らない

 実は、椎間板ヘルニアの手術は、患者が思うような結果にならないこともあるのです。手術がうまくいって痛みやしびれがなくなる人がいる一方で、完全に痛みが取れないことも少なくないと言います。取材当時、ある脊椎外科医(脊椎が専門の整形外科医)はこう話していました。

「100%の手術をしても、100%よくなるとは限りません。術後に少し痛みやしびれが残ったという人は結構います。『完璧に痛みを取りたい』と思う人か、『日常生活に支障がない程度に改善すればいい』と考える人かで、術後の満足度も違ってきます。それを理解しないまま手術を受けると、トラブルになりかねません」

かつてはレーザー手術でも多くのトラブルが

 また、手術がうまくいかなかった患者の再手術を多く手がけてきた別の脊椎外科医は、「どこが原因となっているかしっかり診断せず、漫然とヘルニアを取ったとしか思えないケースや、神経が傷つくのを恐れるあまり除圧が不十分なケースも見受けられる」として、次のように厳しく語っていました。

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「にもかかわらず、術後に痛みが取れないのは『あなたの心に問題がある』と言われ、泣かされている患者さんがいる。医師の技術不足を患者さんに転嫁すべきではありません」

 私は、「名倉さんも手術でトラブルにあったに違いない」と言いたいわけではありません。そうではなく、椎間板ヘルニアの手術には上記のような問題点があることを知っていただきたいのです。AさんやBさんのケースだけでなく、20年ほど前には、椎間板ヘルニアのレーザー手術を実施していた一部のクリニックでトラブルが多発。脊椎外科医の間で問題視されたことがあり、それを取材して記事にしたこともあります。