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4月から“脱丸刈り”、45年ぶりの甲子園出場を果たした秋田中央

 今夏の甲子園には、花巻東以外にも旭川大高(北北海道)、秋田中央(秋田)の脱丸刈り推進チームが出場した。

 秋田中央はじつに45年ぶりの甲子園出場。4月から脱丸刈りを始めたため、どうしても因果関係が気になってしまう。後藤弘康部長は苦笑しながら、こう明かす。

「丸刈りをやめたから甲子園に行けたわけではありませんが、力がありながら勝てなかった選手たちが殻を破るひとつのきっかけにはなったかもしれません」

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 秋田中央が脱丸刈りを導入した理由は、意外なところにあった。後藤部長が続ける。

「今は『生徒が自分でやってほしい』ということまで、保護者がやってしまう時代です。自立した人間を育てるためには、自分のことを自分で考えて行動できるようになる必要がある。脱丸刈りは(佐藤幸彦)監督の発案ですが、入口はここにあるんです」

 秋田中央は国公立大学への進学者を多数輩出する県立進学校である。そんな高校が強豪私学と対等に戦うためには、選手が自立する必要があった。自分たちにとって何が必要なのか。自分たちで考えることで、秋田中央は戦力差や練習量の差を埋めていった。その手始めが「脱丸刈り」というのである。

秋田中央。45年ぶりの甲子園は1回戦で立命館宇治に0-1と惜敗 ©共同通信社

「髪をどこまで伸ばすか」の境界線とは

 脱丸刈りを推進するチームは「髪をどこまで伸ばすか」を選手の裁量に任せているように見えて、実際は指導者による「高校生らしい髪型にしなさい」というあいまいな注文がつくことが多い。選手たちはどの程度を「高校生らしい髪型」と考えるのだろうか。

 昨夏から脱丸刈りのチームとして有名になった旭川大高は2年連続で甲子園出場を果たした。外野手の安藤駿吾選手(3年)は、「高校生らしい髪型」の境界線を語る。

「床屋では『ツーブロックにならない程度にしてください』と注文しています」

 ツーブロックだと「調子に乗っている」という雰囲気が一気に増すのだという。ただし、安藤選手は自身の強烈なクセ毛を指差して「僕の場合はこういう髪質なので、どこでどう切ってもあまり変わらないですけど」と自虐的に笑った。

 脱丸刈りといっても、ロングヘアーやヘアカラーリングは事実上のタブーになっている。今後、現実的なボーダーラインは「ツーブロック」になるのだろうか。