「『愚行録』はタイトル通り、登場人物の誰もがイヤな奴ですが(笑)、そのスパイラルの中に自分もいるし、日本社会の縮図にもなっています。僕がポーランドから戻ってきた時に母国なのにヘンな国だなと感じた違和感が、原作にはぎゅっと詰まっていました」
貫井徳郎の話題のミステリー『愚行録』が、妻夫木聡、満島ひかりら主演で映画化された。メガホンをとったのは、ポーランド国立映画大学で学び本作で長編監督デビューを果たす石川慶(けい)さん。日本の奇妙な階層社会をあぶり出した。
「ポーランドだと街の中心が自然と分かるんですが、東京にはない。みんなせかせかと、中心のないドーナツを回っているような息苦しさがあるんですね。小説に描かれたような名門校の内部生・外部生のようなカースト意識は、ある意味幻想です。これは階層社会に夢を見て、ぐっと入りこんで破綻してしまったフィッツジェラルド著の『グレート・ギャツビー』みたいなお話じゃないか。そう思った時、単にイヤな奴ら、というのとは違う感覚が芽生えてきた」
撮影にはポーランドのピオトル・ニエミイスキを起用。大人の乾いた画作りが光る。
「役者さんたちが面白がってくれて、これまで見たことのない表情を見せてくれました」
『愚行録』
2月18日全国公開
http://gukoroku.jp/