「もう家族だね」と言い合う、年上の友だち

瀬尾 家族みたいに感じる存在って、身近にいらっしゃいますか?

稲垣 何人かいますよ。例えば、草彅さんや香取くんがそう。自分に何かあったら、2人には一番に報告すると思う。あとは、すごく仲のいい年上のおじさんのお友達がいるって昔よくテレビで言っていて……。

©榎本麻美/文藝春秋

瀬尾 知ってます!

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稲垣 「半同棲です」みたいな感じで、よくネタにしていたんです(笑)。彼は13歳上なんですが、僕が25歳ぐらいからかわいがってもらっていて。最初に知り合ったのがワインバーで、ソムリエの役を演じる時に練習をしに行っていたんです。そこにいたお客さんだったんですよね。一緒にワインをいっぱい飲んで美味しいものを食べて、いろいろ話しているうちに、「あっ、なんか合うね」みたいな感じになった。そこからの付き合いで、お互い「もう家族だね」って言い合っているんです。実は昨日もうちに来て、山盛りのトマトをトマトソースに変えて今朝方帰っていきました(笑)。

瀬尾 いい関係ですねぇ。

稲垣 彼とのことを考えると、一緒に同じものを食べたり、一緒に料理を作った記憶はやっぱり大きいな。同じ釜の飯を食う、みたいな。

ポテトサラダ餃子の味は?

瀬尾 好きな人とダラダラ食べるのってすっごい幸せな時間です。

稲垣 そうですよね。『そして、バトンは渡された』は絶対、食べることが好きな人が書いた小説だと思っていました。読んでいるとお腹がすきますし、自分でも料理をしたくなる。小難しい料理は出てこないから、ちょっと頑張ればできそうなんですよね。そうだ、ポテトサラダ餃子って本当にあるんですか?

瀬尾 分からないです(笑)。でも、ポテトサラダが好きな人って、いろんな料理になんでもかんでもポテトサラダを入れたがるじゃないですか。

稲垣 ポテトサラダ餃子は美味しい、ですよね?

瀬尾 いや、きっとモソモソすると思います。芋って火が通るとモソッとする。

稲垣 食べたことないんですね(笑)。面白いなぁ。自分では作ったことのない料理も、登場人物が小説の中で作るってことはある。しかも、その人が作る料理によって、その人らしさが出てくる。食べ物の力って、小説において大きいですね。

※記事の続きは『週刊文春WOMAN 2019夏号』でご覧ください。

text: Daisuke Yoshida
photographs: Asami Enomoto
styling: Akino Kurosawa
hair & make-up: Junko Kaneda

瀬尾まいこ(せおまいこ)

1974年大阪府生まれ。大学卒業後、中学校の国語講師をしながら教員採用試験に落ち続ける中、小説を書き始める。2001年『卵の緒』で坊っちゃん文学賞大賞を受賞しデビュー。05年『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞を受賞。同年、採用試験にも受かり、11年までは中学校教師と兼業する。奈良県で夫と5歳の娘と暮らす。

稲垣吾郎(いながきごろう)

1973年東京都生まれ。91年CDデビュー。8月30日から、昨年夏に大好評を得た主演ミュージカル『君の輝く夜に~FREE TIME, SHOW TIME~』を日本青年館ホールで上演する。

【今日の一冊】そして、バトンは渡された

17歳の森宮優子には母が2人、父が3人。生まれてから名乗った名字は4つ。でも彼女は言う。「困った。全然不幸ではないのだ」。2019年本屋大賞受賞作。

瀬尾まいこ

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週刊文春WOMAN: 文春ムック

 

文藝春秋

2019年8月16日 発売