罵声や中傷が飛び交い、その人たちを嫌いになる
ネットでは「自分の見たいものしか見ない」ことができるので、エコーチェンバー効果が非常に起きやすい。これは大きな問題とされているが、じゃあエコーチェンバーの外側にいる人は、エコーチェンバーと無縁でいられるのかというと、そうではない。本物の反響室は、音漏れしないようにコンクリートなどで外壁を覆って遮音してある。だから中の音は外には聞こえてこない。でもネットのエコーチェンバーは、ツイッターのようなオープンなSNSで起きるし、たいていの利用者は鍵などかけていないので、中の声は外からも丸聞こえになっている。
そうなると、エコーチェンバー現象で先鋭化し、飛び交っている罵声や中傷が、そのグループとは無縁な外の人間にも聞こえてしまう。そういう声をさんざん聞かされると、外部の人はその人たちが嫌いになっていく。これを仮に「騒がしい街宣車効果」と呼んでみたい。内部から見たエコーチェンバー効果は、外部から見ると騒がしい街宣車効果になる。この2つは、表裏一体だ。
「騒がしい街宣車効果」を避けるためには?
この表裏一体の問題には、厄介なことがひとつある。それは、エコーチェンバー効果は自分が先鋭的なグループにはまらないようにすることで避けることができるけれども、騒がしい街宣車効果は先鋭的じゃない人にも感染してしまうということだ。先鋭的なグループの罵声を外から見てしまうことで、そのグループの持っている考え方や価値観のすべてが嫌いになってしまう。そういう危険性を秘めているのだ。
エコーチェンバー効果だけでなく、騒がしい街宣車効果も、やはり分断を加速させるので、非常によくない。では、騒がしい街宣車効果を避けるためには、どうすればいいのだろうか。
根本的な解決方法などとうてい見つからず途方にくれるけれども、私はとりあえず2つの対症療法を考えている。ひとつは、先鋭的ではない、中庸な意見をたくさん読むようにすることだ。極端に先鋭的な右ではなく、中道よりの右。極端に罵声をとばしまくる左ではなく、穏健な左派。私は両方の人たちを見つけてはツイッターの個人的なリストに入れて、毎日これらの人たちの意見を読むようにしている。たったこれだけのことでも、左右に対する忌避感はだいぶ収まるようになる。