総選挙や地方選のときになると、街には選挙運動車があふれ出す。スピーカーでしつこいほど候補者名を連呼し、「最後の、最後のお願いです」と叫ぶ。毎回うんざりしている人は多いだろう。一部の有権者にはそれなりの効果があるから今も続いているのだろうが、名前の連呼を聞くたびに「この候補には絶対投票したくない」と思う人は少なくないはずだ。
最近は少なくなったが、右翼団体の街宣車もうるさかった。装甲車ばりの真っ黒な車で軍歌を流し、軍服みたいなのを着て大音量で威嚇する。そういえばだいぶ昔の話だが、新聞社にいたころに同僚の公安警察担当記者から「右翼が六本木の中国大使館前で、『こらーエザワー、出てこいエザワー』って叫んでたよ。警備の警察官も苦笑してた」と聞いたことがあった。1998年、当時の江沢民国家主席が来日したときの話である。
日本国内で右翼のイメージが非常に悪いのは、あの黒塗の装甲車の印象が強烈に、いまだ色濃く残っているからではないかと思う。右派は中道寄りから極右までいろんな集団や党派があるが、暴力団に近い街宣右翼のイメージに迷惑をこうむってうんざりしていた人は少なくなかっただろう。
「騒がしい街宣車」のせいで、人々の持つイメージは悪くなってしまう。そうじゃない地方政治家やそうじゃない右翼もいたはずだが、十把ひとからげで「騒々しく迷惑な人たち」とイメージされるようになってしまうのだ。
同じことはツイッターでも起きている
同じようなことが、近年のツイッターでも起きている。強い言葉を使って他者を罵る人たちがいて、そういう罵声を日々見ていると、その人たちが属している党派や集団のすべてに嫌悪感を感じるようになる。「反日けしからん」「韓国人出ていけ」と大声をあげる人たちをたくさん見ていると、右派に嫌悪感を感じるようになる。逆にいろんな人を「ネトウヨ」呼ばわりしたり、福島県民を罵ったりする人たちを見ていると、左派にうんざりしてくる。
インターネットの「エコーチェンバー効果」というのがある。エコーチェンバーは反響室のことで、同じような価値観の人たちとばかりコミュニケーションし、共感しあっていると、閉鎖的で偏った意見や価値観がどんどん仲間内で増幅してしまって、孤立した島宇宙のようになって先鋭化し、デマや罵声の温床になりやすい。