20歳の男性が2人の老人を殺害した2014年の事件。老人はすぐ殺されたにもかかわらず、同じ家にいた14歳の少女が殺害を免れ、逃げ切った理由とは…? 2014年に起きた事件の背景をノンフィクションライターの諸岡宏樹氏の著書『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。(全2回の1回目/続きを読む)
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「おじちゃん、助けて!」
その事件は被害者の孫娘である女子中学生の上田華菜さん(当時14)が、親戚の男性宅に飛び込んできたことから発覚した。
ブラジャーとパンティーと靴下という異様な格好。靴下の裏には血痕がベッタリと付着している。泣くことも忘れて顔面蒼白になり、ガタガタと震えている。
「一体、どうしたんだ?」
「おじいちゃんとおばあちゃんが殺された…」
「何だって?」
現場の家では祖母(73)と祖父(81)が血まみれになって倒れていた。いずれも頸動脈を複数回刺されており、出血多量で即死状態だった。男性は直ちに救急車と警察を呼んだ。
それから15分後、通行人から「刃物を持った男が自転車に乗っている」という110番通報が入った。
警察官が駆け付けたところ、男は自転車を捨てて逃げ出し、近くの河川敷で取り押さえられた。男は関口智也。年齢20歳。逮捕後、関口の供述通り、凶器の牛刀が近くの雑木林から発見された。
犯人の「本当の目的」は…
関口はフィリピン人の母親とのハーフ。次男として生まれたが、9歳のときに両親が離婚。父親に引き取られて育てられた。
友達は多く明るい性格だったが、勉強はまったくできず、中学卒業後、高校進学を断固として拒否。
かといって就職もせず、父親からもらう1日1000円の小遣いでその日暮らしをしていた。
事件の8カ月前、友人と遊びに行った際、電車の中でむっちりとした太ももを露出したミニスカートの女性が正面に座るという出来事があった。
「おい、見ろよ。パンチラだぜ、ムフフフ…」
友人は冷やかしで笑ったが、関口はそのシーンが頭からこびりついて離れなくなった。それ以来、「太ももにペニスをこすりつけて射精したい」という妄想に取りつかれるようになり、街に出て自分と同世代の若い女性をナンパしようとした。
だが、どうやってセックスに持ち込んだらいいのか分からず、さらに悶々とするようになり、「小中学生の女の子なら、脅せばできるんじゃないか」という結論にたどり着いた。