「ギャラ配分」問題と「奴隷契約」
辛い練習生生活を抜け出してデビューを飾れるのは、ひと握り。だがそこに至っても、まだ成功にほど遠いのが現実だ。
現地紙によると2015年デビューのある5人組グループは、2年の活動を通じて一度も収益が配分されなかったと報じられている。それどころか所属事務所代表は「1食抜いたくらいで死なない」と、満足な食費も渡さなかったという。このグループは裁判の末、昨年6月にようやく専属契約を打ち切って事務所から解放された。
吉本興業を巡っても注目を集めていた、ギャラの配分問題。韓国では芸能人が強いられるこうした不公平な取り決めを、「奴隷契約」と呼ぶ。
とりわけK-POPアイドルや練習生を巡る「奴隷契約」は、早い時期から問題になっていた。背景にあるのは、練習生に長期間のトレーニングを受けさせるK-POPのビジネスモデルだ。時間をかけて先行投資しても、デビュー後に成功できなければ負債しか残らない。そのため資金力やマネジメント力の弱い中小芸能事務所ほど、売れるまでの待遇は過酷になる。また時間とカネをかけて育てた人材を他社に引き抜かれては、ビジネスが成り立たない。そこで巨額の違約金と長期間の専属契約で、アイドルを拘束する仕組みだ。
アイドルと所属事務所を巡る確執の数々
2009年には東方神起が13年間もの専属契約を結んでいることが報じられ、「奴隷契約」として非難を浴びた。ただし韓国の公正取引委員会はそれと前後して、専属契約期間を制限する「大衆文化芸術家標準契約書」を公示。以後K-POPアイドルの専属契約は、最長7年に抑えられている。
公取委はまた2017年3月、芸能事務所と練習生との契約についても是正を行った。それまで例えば練習生の都合で事務所を辞めると、投資額の2~3倍、平均1億~1億5000万ウォン(約920万~1380万円)の違約金を請求されたという。また契約期間があいまいなまま拘束状態だけが続く例もあり、対策が求められていた。もっとも公取委の是正は強いペナルティをともなわず、実効性を疑う声も上がっている。
海をはさんで耳目を集める日韓それぞれの芸能界。カネと羨望が集まる世界に、ゴタゴタが尽きることはない。
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