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 まず、GSOMIAの破棄は、日本と韓国との間の防衛秘密の交換だけを考えるならば、相互にあまり実害はないと思われる。防衛秘密情報の世界においては、現在、米軍が圧倒的に優位にあり、日本も韓国も「貰う側」だからだ。それゆえ、日本が韓国から情報を貰わなくてもそれほど困ることはないだろう。

陸海空自衛隊相互でさえも重要情報は隠したがる

 筆者の駐韓国防衛駐在官時代(1990~93年)にGSOMIAは無かったものの、陸・海・空幕僚監部及び統合幕僚監部と、韓国軍のカウンターパートの情報参謀は、年に1度、相互に両国を訪問して会議を実施していた。その席では、当然北朝鮮情報などについての意見交換があったが、「アッ」と驚くような重要情報を与えることは無かったと記憶している。

 このような場で、先に重要情報を開示してきた場合は、「下心」があると見るべきだ。「重要情報」によって相手国を「情報操作」しようとしているか、同じレベルの「重要情報」を相手から引き出そうとする意図がある。そもそも、情報とは隠したがるものである。陸海空自衛隊相互でさえも重要情報は隠したがる。もとより、防衛省、警察庁、外務省も相互に情報は隠したがる。情報とはそのようなものである。

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韓国軍の兵士 ©iStock.com

レーダー照射問題が起きた時点で信頼関係は壊れていた

 では、日韓間にGSOMIAが締結され「情報交換できる間柄」であることは何を表すのか。それは、相互信頼関係(準同盟関係)の証である。現在、日本は、韓国の他に米国、オーストラリア、北大西洋条約機構(NATO)などとGSOMIAと同種の協定を結んでいる。

 日韓間のGSOMIAが「情報交換できる間柄」を意味することから考えると、昨年12月に韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題が起こった時から、両者の関係はこじれていた。今回の「半導体原料規制」「ホワイト国外し」以前に日韓両国間の安全保障面における信頼関係は既に大きくダメージを受けており、GSOMIAはかろうじて残っていた最後の絆だった。

 だが、GSOMIAの破棄で日韓がそこまで大きな「実害」を受けない一方で、大きな実害を被る国がある。それは言うまでもない、米国だ。