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 米国は、GSOMIAは軍事情報面における同盟国のネットワークの重要要素と認識しているはずだ。米中覇権争いを展開する北東アジア地域の中で、日韓間のGSOMIAが破棄されることは、米国にとっては極めて「痛手」になる。中国に付け入る隙を与えるからだ。

 米国高官による「日韓間のGSOMIAの関係が壊れれば、米国の利益も危険な状態にされる」との嘆きは真理を突いている。日韓間のGSOMIA破棄は、すなわち「米韓同盟の弱体化」を意味する。中国、北朝鮮、ロシアは、この事態を見て「しめしめ」とほくそ笑んでいるにちがいない。

仲介に乗り出し始めた米国の思惑とは?

 それを踏まえれば、米国が日韓調停に乗り込むことはきわめて自然な流れである。報道によれば、ポンペオ米国務長官は、7月30日、日韓対立解消の仲介に乗り出す考えを示した。ポンペオ長官は「両国にとって落としどころが見つかるよう手助けができれば、それは米国にとっても明確に重要なことだ」と述べた。

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米国の思惑はどこに? ©iStock.com

 ここで、米国が日韓仲介の労を取るモチベーションを考えてみたい。

 分割統治戦略と訳される「ディヴァイド・アンド・ルール戦略」によれば、日韓があまりに友好を深めすぎることは、米国にとって得策ではない。この戦略は、統治者が被統治者間の人種、宗教、イデオロギー、地理的・経済的利害などに基づく対立・抗争を助長して、連帯性や友好性を分断・弱化し、自己の支配に有利な条件や環境を作ろうとするものである。

日韓の話し合いが長引くことを米国は望んでいる?

 日韓関係が悪化すれば、韓国が中国サイドに飲み込まれる恐れがある。米国が、ここで両国の仲介に乗り出せば、両国に大きな“貸し”を作るとともに、韓国を自陣営に繋ぎ止めることができる。しかし、現在の状況に鑑みる限り、日韓両国が短期間に妥協できる可能性は少ない。

 これは私見だが、米国は自己の仲介の下に日韓が延々と話し合いを続けてくれればそれで良いと思っている可能性がある。そうすれば、米国は日韓両国に対して影響力を維持するとともに、中国に付け入る隙を与えないで済むからだ。

 そのシナリオを示唆するようなポンペオ米国務長官の発言がある。

「両国とも米国の大事なパートナーだ。日韓両国が話し合って問題解決に向け努力してほしい」

 両者に貸しを作っておきたい米国の本音を考えると、これから本腰を入れて仲介するかどうかは不透明だ。日韓対立の終わりは一向に見えてこない。

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 筆者の福山隆氏も参加した「文藝春秋」4月号の座談会、「『日韓断交』完全シミュレーション」では、元韓国大使の寺田輝介氏、韓国富士ゼロックス元会長の高杉暢也氏、同志社大学教授の浅羽祐樹氏、産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏が登場し、現実的な「日韓のあり方」を詳細に検討している。

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