日本の半導体原料輸出管理強化への対抗措置として、韓国政府は8月22日、GSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)の破棄を決定した。「日本から妥協を引き出すため、外交カードとして8月24日の更新期限ぎりぎりまで態度を明らかにせず、最後は延長に応じる」との予測が多かったため、この段階で破棄決定を下したことは意外だと受け止める向きが多い。

一線を越えた文在寅大統領 ©共同通信社

ポンペオ国務長官は韓国の決定に「失望した」 

 GSOMIAの破棄は、日本と韓国との2国間の防衛秘密の交換においては、相互にあまり実害はないということは、文春オンラインに掲載した拙稿「泥沼の日韓報復合戦『GSOMIA破棄』でも日本に実害はない!」で記した通りだ。日本は韓国から情報を貰わなくても、それほど困るわけではない。

 言うまでもなく、困るのは米国である。米国はGSOMIAを、軍事情報面における同盟国のネットワーク、すなわち対中国包囲網の重要な要素と認識しているからだ。それゆえ、米中が覇権争いを繰り広げる北東アジア戦域の中で、日韓間のGSOMIAが破棄されることは、米国にとっては極めて大きな「痛手」になる。

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 ポンペオ国務長官が22日、「(日韓の)情報共有協定に対し、韓国が下した決定を見て、失望した」と述べたのは偽らざる本音だといえよう。